松菱くんのご執心
「なに? 渡したいものって」部屋に戻ってきた松菱くんに尋ねる。


「いや、別にない」


「ないの?」


「うん」


どういう事か訳が分からず、やや混乱しながら

「体調が悪化すると行けないから、わたしももう帰るよ」と腰をあげると、


松菱くんは扉を閉めて、わたしの横を通り過ぎ、ベットへ腰掛けた。



「話が、したかったから」と伏せた目を緩やかに上げる。



「ただ、みかさと話したかった」と赤く染まった顔で微笑んだ。



 あの二人が帰ると凄く部屋が広く感じたし、それ以上に静かになった。


外で、ちゅんちゅんと鳥の鳴く声さえも鮮明に聞こえる。



「じゃあ、何を話そう」



 今までの話、これからの話、どんなことをしたいのか、夢とかはあるのか。


わたしも色々話したいことはあるが、それよりも、何よりも、


「横になってた方がいいんじゃない?」と声をかける。



明らかに額に汗を滲ませ、彼の熱があがってきてる気がした。



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