松菱くんのご執心


 シャツのボタンもいくつか外していてブレザーの下にグレーのパーカーを着ていた。


彼の綺麗な顔立ちが、クールな印象を超えて、怖いと思ってしまうのも無理のない話かもしれない。



「新学期が始まってからわたしの隣の席はずっと空席だから、気になってたの」


わたしはメロンパンを齧っている松菱くんの手をしげしげと見つめる。


「まさか、不良少年だとは思ってなかったけど」


「クラスの欠席者が不良少年だって知らなかったのはお前だけだよ。
大体のやつは知ってる。今日だって俺が来た時、ひそひそ話してるやつばっかりだったろ」


「わたしは昨日気づいたよ。すれ違った時、見た事ない顔だったから、わたしの隣の席の子かなって」


松菱くんの顔を覗き込むと、目を丸くしていた。


「お前、学年全員覚えてんのか?」


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