甘く淡く消えてゆく
私が呆然と立ちつくし、不思議そうに自分の机の上に置かれたりんごジュースを見つめていると、
「昼休み前ぐらいにクマが置いてたぞ」
と不意に後ろからそう声をかけてきたのは同じクラスの寺内だ。入学当初、寺内は席が前後だからよく話をしていた。だから割と仲のいい男子だ。
「え、あ、そうなの?なんで?」
私は少し戸惑った。誰がりんごジュースを置いたかはわかった。だがなぜ話したことも無い深瀬くんが私の机にそれを置いたのかが分からない。多分、寺内は理由は知らないだろうけどつい聞いてしまった。
「クマとぶつかったろ?昼食前に」
と寺内が言う。
「あー、うん。なんで知ってんの?」
「だって、昼食の廊下なんて人でごった返しだろ?そん中でお前があんだけ派手に尻もちつけばみんな騒ぎ立てるわ笑笑」
と笑い混じりに言われた。確かに私は派手に尻もちをついたかもしれなかったけど、一瞬のことすぎてよく理解してなかった。もっといえばあんな熱気で気持ち悪くなりそうな状況で考える暇はなかった。
「多分、ぶつかった事、ちゃんと謝りたかったんだよ。クマも不器用なやつだからな笑」
と寺内は深瀬くんの席を見つめながらそう言った。深瀬くんはまだ教室にいない。もうチャイムがなるのにと思った時、そのことを見計らってたかのようにチャイムがなった。
なぜ寺内があんなふうに深瀬くんのことを言ったのかが少し突っかかって聞こうとしたけどすぐに先生が教室に入ってきたから聞けなかった。急いでりんごジュースを机の中に入れた。
結局、5限が始まっても深瀬くんは帰ってこなかった。
帰りのホームルームが終わり、そそくさと教室を出ていこうとする寺内を私は呼び止めた。
「ねえ、なんで深瀬くん5限いなかったの?
ていうか、どこ行ったの?」
私は深瀬くんに直接りんごジュースのことを聞きたかった。そして、お礼を言いたかった。
「さ ぼ り 」
と寺内は口を大きく動かして口パクをした。
多分、サボってると周りの先生に気付かれないように寺内なりに配慮したのだろう。
「あ、保健室行ってみれば?」
と寺内は私に言い残して、走り去ってしまった。
保健室に行こうと階段を降りるとと廊下の奥に探し求めていた後ろ姿を見つけた。
「深瀬くん」
と後ろから呼び止めると彼はピタッと止まりこちらを振り返った。すると鋭い目と目があった。一瞬、怖くなって下を向いてしまう。
「何?」
と深瀬くんの低い声が私の鼓膜を振るわせる。
「りんごジュース....ありがとう」
私は彼にお礼を言うと彼は何も言わず、向き直った。そして背中を見せて私に
「罪滅ぼし.........。」
と言ってまた歩き出してしまった。
やっぱりよく分からないし、話しづらい。
だが、お礼を言えた満足感と達成感が私を包んだ。
「昼休み前ぐらいにクマが置いてたぞ」
と不意に後ろからそう声をかけてきたのは同じクラスの寺内だ。入学当初、寺内は席が前後だからよく話をしていた。だから割と仲のいい男子だ。
「え、あ、そうなの?なんで?」
私は少し戸惑った。誰がりんごジュースを置いたかはわかった。だがなぜ話したことも無い深瀬くんが私の机にそれを置いたのかが分からない。多分、寺内は理由は知らないだろうけどつい聞いてしまった。
「クマとぶつかったろ?昼食前に」
と寺内が言う。
「あー、うん。なんで知ってんの?」
「だって、昼食の廊下なんて人でごった返しだろ?そん中でお前があんだけ派手に尻もちつけばみんな騒ぎ立てるわ笑笑」
と笑い混じりに言われた。確かに私は派手に尻もちをついたかもしれなかったけど、一瞬のことすぎてよく理解してなかった。もっといえばあんな熱気で気持ち悪くなりそうな状況で考える暇はなかった。
「多分、ぶつかった事、ちゃんと謝りたかったんだよ。クマも不器用なやつだからな笑」
と寺内は深瀬くんの席を見つめながらそう言った。深瀬くんはまだ教室にいない。もうチャイムがなるのにと思った時、そのことを見計らってたかのようにチャイムがなった。
なぜ寺内があんなふうに深瀬くんのことを言ったのかが少し突っかかって聞こうとしたけどすぐに先生が教室に入ってきたから聞けなかった。急いでりんごジュースを机の中に入れた。
結局、5限が始まっても深瀬くんは帰ってこなかった。
帰りのホームルームが終わり、そそくさと教室を出ていこうとする寺内を私は呼び止めた。
「ねえ、なんで深瀬くん5限いなかったの?
ていうか、どこ行ったの?」
私は深瀬くんに直接りんごジュースのことを聞きたかった。そして、お礼を言いたかった。
「さ ぼ り 」
と寺内は口を大きく動かして口パクをした。
多分、サボってると周りの先生に気付かれないように寺内なりに配慮したのだろう。
「あ、保健室行ってみれば?」
と寺内は私に言い残して、走り去ってしまった。
保健室に行こうと階段を降りるとと廊下の奥に探し求めていた後ろ姿を見つけた。
「深瀬くん」
と後ろから呼び止めると彼はピタッと止まりこちらを振り返った。すると鋭い目と目があった。一瞬、怖くなって下を向いてしまう。
「何?」
と深瀬くんの低い声が私の鼓膜を振るわせる。
「りんごジュース....ありがとう」
私は彼にお礼を言うと彼は何も言わず、向き直った。そして背中を見せて私に
「罪滅ぼし.........。」
と言ってまた歩き出してしまった。
やっぱりよく分からないし、話しづらい。
だが、お礼を言えた満足感と達成感が私を包んだ。