港町 グラフィティー


「わかった きっと行くから…聡も絶対に来てね。約束ね」

「おお~久しぶりに聞いたな 良美の約束ね…破ってばっかだったもんな…あの頃。今度こそ守るからさ 心配すんなよ」
電話を切ると 孝夫がユックリと振り返る
「電話長かったね?友達?」

「そう昔の友達…」孝夫の顔も見ずに返事をかえす。
キッチンの椅子から立ち上がると軽く目眩がした。

「私もう寝るわ…なんだか疲れちゃって…」寝室のドアの前から孝夫に声をかける。

「今日の検査も時間くってたからな~早く寝た方がいいよ…おやすみ」「おやすみ・・・」

バタンと寝室のドアを、閉めたとたん壊れてる心臓が 
口から出てくるんじゃないかと
思うほどの 胸の鼓動が早い。


翌日 近所に住む母に事情と本心を打ち明けた。
私の話を聞き終えた母は
「そんなんで気が済むのなら 行ってきなよ…ちゃっと2日には戻ってくるんだよ。
薬もちゃんと持っていきなよ。京都はどこに泊まるの?孝さんにはどう言っておくの?まぁ適当に親戚んちでも行くって言っておいたらいいじゃないの。
私も口裏合わせてあげるからさ…大丈夫だよ。」
ここまで一気にまくし立てた母は 少し考えるように私の顔を見つめていた。

体調の悪い私を心配して名古屋駅まで母と孝夫が見送りに来てくれた。
孝夫は心配と軽く怒りの表情で私の荷物を持ちながら
『具合が悪くなったらすぐに戻ってきなよ…なんでこんな時に京都なんて…行くんだよ…駄目だって言って聞きやしないし…」

その時ホームに下りの新幹線が入ってきた。
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