港町 グラフィティー
「ごめんね…わがまま言って…行ってきます」
孝夫から荷物を受け取りひかり号博多行きとアナウンスされた列車に吸い込まれていく。
発車のベルがホームの響く 孝夫の後ろで母は笑って手を振っていた。


車内は午後3時の時間帯のせいか それほど込み合っては折らず 自由席でも余裕で座れた。進行方向にむいて左窓際も腰掛けた。
流れる景色を見つめながら 買っておいた缶コーヒーを開ける…喫煙席だったのでバックからタバコを取り出して火をつける。
胸の奥まで煙をすいこみ…煙は胸から逆流して頭に中まで真っ白になる。
ワゴンレディが何度も往復しながらコーヒーやジュース・弁当を売り歩いている。

「お姉さん コーヒー一つちょうだい…」

「350円です。」
お金を渡すと専用のポットから 紙コップに薄い琥珀色したコーヒーをついでくれる。

「砂糖もフレッシュもお付けしますか?」

名古屋からひかりで京都まで35分 いくらお腹が減ってても 弁当は無理。タバコ数本とコーヒーで時間をつぶす。
勿論 もう少し時間があっても 食欲なんて5日前からない 弁当は無理だった。
あれから何年たったんだろう…新幹線の窓の外を景色が流れる…14年も前だ 聡に出会ったのは…



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