港町 グラフィティー
「飽きたねぇ…まぁいいや。
そういやぁ~ほら…真由美って
覚えてる?5中の…」
ショウコが意地悪な目つきで
聞き返す。

「どんなコだっけ?あんまり覚えてないなぁ」
本当に記憶になかった。

ショウコと奈津美の視線が交差する。

「知ってる…真由美と連れの奴…ケイ逹にマワサレタノ…」


マワサレタ…ケイ逹って…逹って?

「いつの話なんだよ…それ?」

「半月くらい前…だったよね?奈津美」
ショウコがすっとぼけた顔して奈津美にふる。

「そうじゃない…半月?くらい前かな。
真由美も真由美だから…仕方ないかもね…
連れのコが 結構真面目なコで…ショックで酷いらしいよ」
奈津美は口紅がベットリついたタバコを片手に話す。


マワサレタ…そんな事は 日常茶飯事…
別に大して驚く事じゃない…
けど…半月前…ケイ逹…
ヤバイ…どんどん…思考回路が回り出す。

ボロアパート…ちっちゃい水色パンティ…
センベイ布団…山のような吸殻。
映像が映る。
とたんに ホコリとカビの匂いが思い出された。


「ふ~ん…そりゃ大変だ…真由美ねぇ~わかんないし…連れのコってのも…
引っ掛けられて…ノコノコついて行く方もドジだよね。
で…何人でやっちゃたのさ?」
興味なさげに見えているだろうか…なるだけ感情の出ないように
聞き返す。

「詳しい事はよくわかんないけど、5~6人じゃないの。」
ショウコがヘラヘラ笑ってる。

「ところでそれって 誰から聞いたの?」

「ツギちゃん」

ツギちゃんかぁ…その名前を聞いたとたん…なんかが崩れるような気がした。
きっと…聡は一緒だったはずだ。
あの夜…あのアパート…私を無理やり寝かせた布団で…やっちゃたんだ。
聡の下半身なんて…想像もできなかった…けど
ラリッた目だけ…思い出せた。
それっきり 黙ったままの私に
ショウコと奈津美も もう話しかけてこなかった。

気持ち悪かった…本気で吐きそうだった。







< 21 / 25 >

この作品をシェア

pagetop