港町 グラフィティー

ガキの癖に・・・


私はもう大人なんだから アンパンなんて吸わないし見向きもしないけど 
どうやら聡達グループは今だに吸ってるらしい。

もうさぁ 止めたら…アンパンなんてさ…らりってちゃ話しになんないじゃんか…かっこ悪いし…」
昼間一人のあいつの家に行った時 あんまり部屋が臭いもんだから ついつい大声で怒鳴ってしまった。

そりゃ 今までにないくらいあいつが好きで…
「クールス」のレコードガンガンかけてラリってても 
わけもなく冷たくされても…
待ち合わせに5時間遅れてきても…
やっぱり心底好きだった。
聡は鳶のバイト 私は喫茶店でバイトして年をごまかしてスナックなんかで日銭をもらってた。

平日の夕方6時から3時間が私と聡の時間…
土曜日や日曜日…毎日の3時間以外の時間は全てあいつの時間。
例えディスコのフロアーで逢おうが 集会で見かけようが絶対に束縛しない…勿論他の女といても…私が男といても。
でも…本当は約束なんて糞くらえ!っていつも思ってた。

聡は気が向くと『モダン焼き』を焼いてくれたんだ。
関西の家庭らしく 厚い一枚鉄板が常備してあって それをガスコンロに直接置いて鼻歌を歌いながら焼いてくれた。
モダン焼きなんてモノも知らなかった私は随分感動してしまった。
そんな日の聡は女の子みたいなプックリとした唇が ピンク色でシンナー臭くなくって 穏やかな目元は優しげで…2人の距離が50センチくらいに縮まった感じがして
本当に嬉しかったなぁ。
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