悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 アリスもそれはわかっているが、今の隊員たちに必要なのは規則正しい生活と、適度なやりがいだ。

 そしてこれからもずっと、この地の国境が突然侵されないとも限らない。

 何かがあってから突っ込まれたら遅いのだ。

 皆が何をしていたかという記録を残しておくことは、重要だとアリスは考えていた。

「日勤の数が多すぎやしませんか」

「もちろん何人かは市中の見回りや私の手伝いをしてもらうわ」

「手伝いって、掃除や洗濯ですか」

「ええ。楽しくやりましょう」

 不満そうな隊員たちもいたが、アリスは笑い飛ばした。

 朝から晩まで患者の看護で走り回っていた亜里に比べれば、みんなで家事をすることはどんなに楽かと思う。

「お妃様にはかなわねえや。俺たちどんどん、無駄に健康になっていく気がするわ」

 カールが笑って頭を掻いた。

 周りの苦い顔をしていた隊員たちもつられて顔をほころばせる。

「ああ? なんだこりゃあ」

 剣呑さを含んだ声が、その場の空気を壊した。

 一同が振り返ると、ジョシュアを取り囲んだ一行がシフト表を一瞥した。

< 83 / 215 >

この作品をシェア

pagetop