如月の空の下、光る君を見つけた。
そして昼休み。



「みっちゃんごめん。今日は片桐くんと一緒に食べてくる」


「今日だけじゃなくて毎日になるといいね~」


「そうだね!」


「えっ?」



ジョーダンのつもりだろうけど、私は本気でそう思ってる。


アイドル如月陽翔と友達って考えたらすごいことなんだもん。


そうじゃなくても仲良くなりたいって純粋に思ってるし。


私はリニア級の速さで詩央くんの席に走った。



「詩央くん!」


「はい」


「お昼一緒に食べよ。ほら、行こ」


「いや...」



私は無理やり立たせ、左腕を引っ張って昨日の踊り場に向かってずんずんと歩いた。


すれ違う人の中には2度振り返る強者もいたけれど、そんなのガン無視した。


そして強靭なバリアで進み、我が結界の場へやって来た。


ここなら誰にも邪魔されない。



「なんなんだよ急に。必要以上に関わってくるな。注目されたらどうするんだ」


「ある意味注目の的だとは思うけど、皆面白がって見てるから詩央くんがアイドルだってバレないと思うよ。あっ、それよりこれっ!私朝4時に起きて作ったんだよ」



私は弁当箱を取り出した。


うちは母子家庭だから料理は当番制。


料理だけはまずまず出きるのです、えっへん!


なんて言っても、スポーツも勉強も出来るみっちゃんも料理出来るからあんまり自慢にならないんだけどね。



「へえ、料理は出来るんだ。勉強は全然出来ないのに。奇跡だな」


「奇跡って、それは酷いよ!私だって出来ることあるんだから」


「いいから箸。これだけ渡されても食べられない」


「ごめん、ごめん」



昨日100均で買ったばかりの箸を渡す。



「ありがと。じゃ、いただきます」



わぁ...!


陽翔くん...じゃないか。


詩央くんの食事シーンを独占出来るなんて。


しかも口に入っていくのは私の傑作のハンバーグさんたち。


今回はハンバーグと卵焼きという王道2種が入っているからかなりの自信作。


さあ、お味はいかが?



「ねえ味は?」



聞いても反応がない。


まるで不味いものを流し込むかのように黙々と食べている。


見た目に凝って場所を幾度となく変更したブロッコリーもミニトマトも気にされることなく口の中へ放り込まれた。


そしてあっという間に完食してしまった。


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