空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
電話が切れた後も私はしばらく受話器を握りしめ、立ったまま呆然と壁を見つめていた。

やがて電話をかけてきた男性の声とその内容が甦ってきた。

全身から血の気が引いていき寒気に襲われ、私は膝から崩れ落ちた。

そして、床に拳を打ち付けた。

何回も何回も拳で固い床を叩いた。

涙が溢れてきて激しく呼吸を繰り返しているから、過呼吸になって苦しい。

苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて......言葉で言い表せないほど、悲しい。


「お姉ちゃん...どうしたの?」


異変を察知した緋萌が2階から降りてきた。

自分より背の低い私の背中をさする。

私は答えられなかった。

答えたくなかった。

信じたくなかった。

言葉にしたら、

声にだしたら、

本当に...

本当に...

本当に...

いなくなっちゃうと思ったから。

いや、

もう既に...

いないんだ。

父はもうこの世には......いない。
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