空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
始業式からの帰り道。

私は同じ3年1組に進級した夏帆ちゃんと並んで歩いていた。


「始業式疲れたね~」

「今日のところはこれで帰れるからラッキーだね。はぁ、明日から6時間授業嫌だなぁ」

「受験生なんだし、頑張らなきゃ」


勉強に張り合いがある人はいいなぁ。

髪をハーフアップにし、桜のアクセサリーを着け、メガネからコンタクトレンズになった夏帆ちゃん。

すっかり海くんのカノジョになってしまい、海くんの理想像まっしぐらだ。

勉強頑張って同じ大学に行くとか言うんだろうな。

羨ましい限りだよ。

私はこれからも孤独の戦いを続けなければならないというのに、この余裕を見せつけられたら惨めになる。

もともとネガティブなのにますます酷くなりそう。


「夏帆ちゃんは今日も塾?」

「うん。だけどその前にお弁当届けてから行くよ」

「海くん愛されてて羨ましい」

「そ、そう...だね。愛情は注いでるね」


自覚なしののろけ全開は罪。

密かに傷付く、私。

心は大分修復されてきたけれど、まだ不完全だから何気ない一言で傷を負う。

だけど、悪気があって言ってるんじゃないから私は責められない。


「じゃあ、荷物まとめたら部室行こっか」

「うんっ」


素直に喜ぶのもまた可愛らしい。

私には不足しているものを夏帆ちゃんは全部持っているから海くんのお眼鏡にかなったのだと改めて痛感したのだった。


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