空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
5日の放課後。

部活のある日ではないのだけれど、私は明日持っていく用のクッキー作りに励んでいた。


「夏帆ちゃん、これでいいかな?」

「すごいっ!碧萌ちゃん1人でクッキー作れた!」


一体ここまで何年かかったのか...。

入部3年目にしてようやくクッキーを作れるようになった。

成長の遅さに呆れる。

とは言っても、夏帆ちゃんの優しい指導のお陰だ。

計量出来ただけで誉めてくれたり、オーブンの前で見張りをしているとありがとうって言ってくれたりしたから私は腐らずにここまで来られたんだ。


「夏帆ちゃん、いつもありがとう。夏帆ちゃんのお陰だよ」

「いえいえ。それよりも碧萌ちゃんが食べてくれる人のことを思って優しく穏やかな気持ちで作ったから上手くいったんだよ。気持ちがこもっていればきっと何でも美味しいよ」


夏帆ちゃん...。

なんであなたはこんなにいいこなの?

海くんさすがだよ。

そして、独り占めなんてずるい。


「天気予報では明日は雨って言っていたから気をつけてね」

「そうなんだ...。分かった」


雨なんかに負けてたまるか。

雨にも鉄のハートにも勝ってやる。

私はそう心の中で固く誓った。

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