空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
「あのさ」


颯翔くんが話しかけてくれた。

私は俯いたまま、耳をダンボにする。


「ごめん」

「えっ...」


顔を上げると目が合った。

空よりも、海よりも透き通っていて美しい瞳に半べその私が映り込んでいる。


「無視してごめん。それと、今日も待ってたのに...ごめん」

「いや、でも私が一方的に約束取り付けちゃったから...」

「それでもオレが悪い。悪かった...」


感じる。

強く感じる。

私と同じものを...。

颯翔くんも私と同じだよ。

だって、不器用なんだもん。

不器用で...真っ直ぐ。

そういう颯翔くんが...好きだ。

あの日感じた胸の鼓動は、高まる熱は、幻なんかじゃない。

運命...。

きっと運命なんだよ。

私はその運命を、信じたい。


「颯翔くん」


名前を呼ぶと必ず顔を上げてくれる。

私を見てくれる。

ならば何度でも名前を呼びたい。

これからずっと。

そう思わせてくれたキミを離したくない。

もう傷つくのは嫌だから、

絶対に離さないよ。


「私は颯翔くんのことを知りたい。もっともっと知りたい。そして私のことも知ってほしい」


手紙で伝えるだけじゃ足りない。

口から発する言葉で、表情で伝えたい。

だから...


「だから、まずは...颯翔くんの友達に立候補します」


私が宣言すると、颯翔くんはふっと笑った。


「じゃあ、なってみなよ。オレのことを全部知ってるって言えるくらいの友達に」

「うん。全身全霊で努力する」


初めて2人で顔を合わせて笑った夜だった。


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