転生令嬢の悪役回避術ー心を入れ替え女王になりましたー
キール帝国に行った騎士が帰ってきたのは翌日の午後だった。

騎士が後ろのキール帝国の紋が入った馬車を先導しながら戻ってきたのだ。

馬車の中には3人の侍従と棺が入っていた。

アイリーンはルーメンティーに支えられながらそれらを謁見の間へ案内した。

謁見の間の近くは人払いがされており、アイリーンとルーメンティー、ここまでやってきたキール帝国の侍従と騎士以外誰もいなかった。

「アイリーン王妃陛下、ご報告いたします。
ヴァルテリ国王陛下はやはり…」

その後の言葉に詰まったのか騎士は棺のほうに視線を向けた。

「お顔を見せていただきたい。
その棺を開けてください。」

アイリーンはルーメンティーに支えられながら、棺の近くへやってきた。

キール帝国の侍従が棺を開けると、そこには防腐処理が施されたのであろう、生前と全く変わらない姿のヴァルテリが眠っていた。

アイリーンは目に涙を浮かべながらも、ここまでやってきたキール帝国の侍従のほうへ顔を向けた。

「間違いありません。
ヴァルテリ・アルヴァドス国王陛下です。」

アイリーンはそれだけ言うとその場に泣き崩れた。

「キール帝国、エーリッヒ皇帝から書状を預かっております。」

アイリーンはとても受け取れるような状態ではなかったので代わりにルーメンティーがそれを受け取って中身を確認した。

「和平を結びたいと申すのか…

今、オベリア王国は混乱している。なので新国王が誕生し、息子の喪が明けるまで待っていてほしい。」

アイリーンの代わりにルーメンティーが答え、侍従たちは「かしこまりました、陛下にそのように伝えます」と言い残して謁見の間を後にした。
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