転生令嬢の悪役回避術ー心を入れ替え女王になりましたー
言いたいだけ言って、その場を去ろうとする令嬢たちを呼び止めたのはアイリーンだった。

「言いたい放題行って逃げようってのか?」

席を立ったアイリーンは今にも令嬢たちのドレスをつかむのではないかという勢いだった。

大広間の音楽はやみ、ヴァルテリはアイリーンのもとへ小走りで近寄った。

「ニーナ、どうした?」

「ヴィック、私あの夢を見たときからこうなることはわかってたので言わせてもらうわ。」

アイリーンはヴァルテリが止めようとしたのを制止し、目の前の令嬢たちの方を向いた。

「ロンド伯爵家令嬢、ケイティー。
オストバル伯爵家令嬢、マリア。
モデア男爵家令嬢、レティシア。

あなたたち、言わせておけばありもしないことを言うわね。

私はドレスを自分の意志で買わないの。

あんたたちみたいに馬鹿じゃないから自分の領地でお金を使うようにしているの。
毎シーズンごとに新調して古いものは捨てる。

自分のお金じゃないのによくできるわ。
反吐がでる!

色仕掛けでヴィックの妻になった?
ふざけるんじゃないわよ。

あんたたちが遊んでいるときも私は国のために何ができるのか勉強していた。
お父様に助けてもらいながらも、私は私の力でできる限りのことはしたわ。

あなたたちにできるの?

できるわけないわよね。

私、自分で何も努力しないくせに一人前に騒ぐ人が一番嫌いなの。
もし、この場で自分の方が王太子妃にふさわしいって思うなら、名乗り出て。

別に変わってあげてもいいわよ。」

「ニーナ、それは…」

「ヴィック、これは私のあの令嬢たちの戦いなの。
大丈夫、私は何が起きたとしてもあなたのそばにいるから。」

アイリーンは王太子妃にふさわしいと思えば名乗り出るように3人の令嬢に言ったが、誰も名乗りを上げることはなかった。

「ここで名乗り出ることもできないのに、よく言うわ。

覚えておきなさい、アイリーン・アルヴァドスは普通の令嬢が生涯経験することのないほど、この国のために勉強をしてきたの。

この国のことを誰よりも思っているから。」

3人の令嬢はそれぞれの両親に強く手を引かれながら大広間を後にした。

「ヴィック、心配かけてごめん…
でも、こうするしかなかったの。

許してね。」

ヴァルテリのもとに駆け寄ったアイリーンはヴァルテリの耳元でそう告げた。
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