月下の輪廻
序章
あれから、どれ程の時が過ぎたのだろうか。
肉体が滅び、閉ざされた空間に魂を縛り付けられてから......。
十字形に体を......否、魂を鎖で縛られたシュヴァイツは、ゆっくりと瞼を開ける。霞んだ視界に映る一人の人影。
《ア、レン......違うな......》
瞬きを繰り返し、目の前に立つ人物が宿敵の吸血鬼の王ーーアレンではないことに気付く。
容姿はそっくりと言っていい程似ているが、相手はその息子のデュランだ。こちらを真っ直ぐに見据えている。その青い瞳が憎らしい。
あの日、自分はアレンとミーナの息子のレオン、そしてデュランの力で息絶えた。
《それからずっと俺の魂を縛りやがって......っ》
許さない。
親子揃って憎らしい。
「まさか、テメェに止めを刺されるとはな......」
「純血統の俺達がお前に負ける筈は無いだろう」
手を翳され、鎖の締め付けをきつくされてしまう。
《くそ......っ!》
ギリッと奥歯を噛み締め、これ以上ない程睨み付けるシュヴァイツ。拳を握って前へと突き出そうとするが、鎖が外れる気配が無い。
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