月下の輪廻
第一章
騎士の名家であるコールランド家を出て、前世である吸血鬼のシュヴァイツという男の記憶探しを始めて3年。
外の世界は確かに魔物が蔓延っていて、騎士になる為の鍛練を積んだとは言え、女の一人旅は危険な目にも遭った。
剣だけでは対応出来ない事もあり、二丁拳銃も装備している。
今では戦いも一人でこなせてしまう強さを身に付けた事から、冒険者の中では数少ない、Sランクに認定されていた。
主な拠点をラファル村のギルド『マルシェ』とし、リーファネルは記憶を探し、今は川の流れる側にある古びた遺跡まで来ていた。
《ここ......》
この3年間で分かった事がある。
記憶の欠片が近くにあると、体がそこへ導かれるように、自然と足が赴くということ。
胸の鼓動が早鐘を打つ。
意識がここだと告げる。
呼ばれている......とでも言えば良いのだろうか。
明るい陽射しの下の川辺とは違い、薄暗い遺跡の中をひたと見据え、リーファネルは、中へと足を踏み出す。
入ってすぐに下りの階段があり、天井からは水滴が滴り落ちていた。
そこまで長くない階段を降り、通路を進む。
《暗いな。松明でもあれば良かったが......》