未来は霧のなか

試験が 全部終わった後で、美佐子は
 
「やっぱり妊娠していたよ、私。」

とみんなに言った。
 

「はぁ。まずいね。」

みんな、試験が終わって ホッとしているはずなのに。

もっと重い何かを 背負ってしまう。
 


「遠藤さんには 言ったの、美佐子。」

私が聞くと、美佐子は 首を振る。
 
「言わないとマズいかな。遠藤さん 家庭があるから。心配かけたくないじゃん。」

美佐子は何故、遠慮しているのだろう。

何を恐れているのだろう。
 


「だって。遠藤さんの 子供なんでしょう。」

美佐子の言葉を 不審に思ったのは 私だけじゃなかった。

千恵に聞かれて
 

「多分。」

と美佐子は曖昧に答える。
 

「美佐子。他の人とも したの?」

私は思い切って聞く。

美佐子は微かに頷いて
 
「うん。」と言う。


私達は顔を見合わせる。
 
「誰と?どっちの子か わからないの?」

あゆみに聞かれて
 

「わかんないよ。何人かいるから。遠藤さんに会えない時、声かけてきた人とか。」

美佐子は 投げやりに答える。
 

「遠藤さんは 美佐子が 他の人とエッチしていること 知っているの?」

私の言葉に、
 
「わかんない。私は言ってないけど。誰かが喋ったかもしれない。」

と美佐子は言い、ため息をついた。
 


「ねえ、美佐子。それじゃ、ビッチって言われるよ。遠藤さんだって 責任逃れするでしょう。」

輝美の厳しい言葉に、みんな同感だったけれど。


私は少し、美佐子が 可哀そうになってしまう。
 


「とにかく、病院には 早く行かないと。誰か 年上の人で 一緒に行ってくれる人 いないの?」

今は 美佐子を責めるよりも 対策を考えないといけない。



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