年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
第五章


 私が王宮で暮らすようになって、一週間が経った。到着の翌日から、私は連日、お妃教育に励んでいた。
「今日はここまでにいたしましょう」
 向かいから声を掛けられて、私は長くにらめっこしていたマナー教本から顔を上げた。
 そうすれば、ゴードン伯爵夫人が柔らかな笑みをたたえて私を見つめていた。
 ゴードン伯爵夫人は、私のお妃教育を担う教師の一人だ。お妃教育の内、社交場での振る舞いから、会話選びといった作法全般の指導を請け負ってくれている。
「はい、ゴードン伯爵夫人ありがとうございました」
 私は教本を閉じ、指導の礼を告げる。
「続きはまた明日、お教えいたします。……ふふふ、それにしてもリリア様は本当に優秀ね。呑み込みだってとても早くて、驚かされますわ」
 指導が終わると、夫人は指導中とは一転して、打ち解けた様子で語る。実は、ゴードン伯爵夫人はルーカスさんのお母様で、指導こそ厳しいが、その人柄はとても朗らかで親しみやすい。
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