年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
「……いえ、それは買い被りです。私は優秀とは対極で、呑み込みも遅いので、必死の予習復習でなんとか補っている状況です」
 ゴードン伯爵夫人は目を細め、私に優しい眼差しを向ける。
「本当に謙虚ね。その努力を惜しまずに出来るのだから、やはりリリア様は十分に優秀だと思うけれどね」
 そうして柔らかな口調でゆっくりと続けた。
「私はこの一週間、間近に貴方を見てきたからこそ思うの。どうか、自信を持って? 私が指導する所作や会話術は、単なるテクニックにすぎない。学べば習得できるそれらは、当たり障りなく場を繋ぐだけ。人の心を動かす効力はないわ。けれど貴方の言葉には真心がある。耳障りのいい上っ面の会話以上に、貴方の語る一言一句は人の心の深いところに訴える。それは学んで身に付けられるものじゃない。貴方にしか持ち得ない、なによりも強力な貴方だけの武器よ」
 やはり、ゴードン伯爵夫人は私への過大評価がすぎると思った。
「私には身に余る言葉です……」
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