年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
「皆、騒がせたな。今日の来訪は非公式ゆえ、正式な事は言えん。しかし、そう間を置かず俺はこのリリアと共に皆の前に立つ事になろう。その時は今のように、この者を温かく迎えてやってくれ」
 セラヴィンさんが足を止め、観衆の輪を振り返って告げた。
 ――ヮァアアアア!!
 頭の中は白く塗られ、まともに物を考える隙もなかった。けれど耳をつんざくような歓声に混じる私の名前を聞くにつけ、熱い物がツーッと頬に伝っていくのを感じた。
 私はそのままセラヴィンさんの腕に抱かれて門戸をくぐり、屋敷へと来た道を戻ったのだが、これ以降の記憶は曖昧だ。
 その後の手当ても、王宮への帰路も同様に、ふわふわとしてあまりよく覚えていない。けれど胸に木霊する熱い歓喜は、深く魂に刻まれていた。
 王も王妃も、人々によって生かされるのだ――。


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