年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 不思議な事に、痛みはなかった。
 私は本気で、死んだ事で痛覚を手放したのだろうと思った。だけど瞼越しに眩しさを感じ、ほんの少し力を入れた。そうすれば二度と開かないと思っていた瞼は、予想に反して開く。
「っ、お父さんっ!?」
 私は裏庭で、地面を背中にして仰向けに転がるお父さんの懐に抱かれていた。
「……リリア」
「お父さんっ!!」
 煤だらけの作業着の袖から覗く肌の火傷もさることながら、横たわるお父さんの後頭部からは、おびただしい量の血が流れていた。
「……君の柔らかな巻き毛が窓から見えたよ。焼けて崩れかける外壁を登り切り、窓から君を引き出したのは、本当に危機一髪のタイミングだった。もっとも、あまりにもギリギリで壁を伝い下りる間はなく、こうして飛び降りるしかなかったわけだけれど……。僕の大切なリリア、君を助けられて良かった」
 お父さんはいつもみたいに、大きな手で私の頭をクシャリと撫でた。
 けれどお父さんの手は、私の頭をひと撫でだけしたところで、力なくパタンと地面に落ちた。
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