年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 マルグリットがリリアを殺したいほど憎んでいた事は分かった。だが、そこまで憎むに至った理由が、俺にはどうしても分からなかったのだ。

 向かった地下で、マルグリットは石畳の独房に、膝を抱えて座っていた。
 俺の足音に気付いたマルグリットが、緩慢な動きで顔を上げる。そうして俺を視界に捉えると、マルグリットは不遜な笑みを浮かべた。
「これは若き国王陛下、こんなところまで一体何用でしょう?」
「其方に訊ねてみたかった。何故、そうもリリアを厭う?」
「……」
 マルグリットは笑みの形に口を引き結んだまま、口を開こうとはしなかった。
「俺はかつて、一度其方と会っている。静養で滞在した湖沼地帯のガラス工房で、『どうかこの子と仲良くしてやってね』と、リリアに手を引かれて出向いた俺に、其方は笑って言った」
 マルグリットは食い入るように俺を見つめ、そしてハッと気づいたように目を瞠る。
「……貴方、もしかしてセーラ? あの子が友人になったと言って連れてきた、あのセーラなの!?」
「かつて、そう呼ばれていた事もある」
「なんて事……」
「俺の記憶には、確かに我が子を慈む其方の姿がある。だからずっと、疑問だった。……何故、こうもリリアを厭うに至った?」
 再びの俺の問いかけに、マルグリットは顔を歪めた。
「慈む……? 馬鹿言わないでちょうだい。……でも、そうね。確かに慈しもうと努力はしていたわね」
 怨嗟の篭る低い呟きに、俺は格子越しにマルグリットを注視した。
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