年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 実際に私達の視界に映るのは、歩行路の先の祭壇。だけど確かにこの瞬間、私とセラヴィンさんは同じ未来を見つめていた。
 一層大きくなる歓声と拍手を後ろに聞きながら、私はセラヴィンさんに手を取られ、祭壇が設えられた一段高いひな壇に上がる。
『リリア、どうか幸せに』
 注ぐ祝福の中に、ふと、お父さんの声を聞いた気がした。
 ……お父さん、私はこれからセラヴィンさんと共に、この国の人々の幸せのために人生を捧げます。もちろん私自身も、セラヴィンさんと共に幸せを築きます。
 それから、私にはお母さんを幸せにしてあげる事は難しかった。だからお母さんの事は、天国でお父さんが幸せにしてあげてね……。
 天国のお父さんに向かって心の中で告げた。
『ありがとう、リリア』
 私の胸に笑みの残像を残し、お父さんが消える。それっきり、もうお父さんの声は聞こえなかった。
 私は凛と前を向き、足を進める。不思議な事に、踏み出す足が随分と軽くなっているような気がした。
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