年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
「どんな毒かは私には到底分らない。でも、水分摂取は毒を薄めて、体外への排出をはやめるでしょう?」
 水袋を差し出すと、男性は緩慢に私を見上げた。
 男性と私の視線が間近に絡む。次の瞬間、男性は大仰なくらいに肩を跳ねさせた。目は極限まで見開かれ、真一文字に結ばれていた唇は薄く開いて、声なきまま小さく動く。
 ……え? なに?
「あ! もちろん毒なんて入ってないから安心して!」
 その反応に戸惑うが、すぐにピンときた。男性はきっと、私の差し出す水に毒物混入の可能性を警戒している。
 ただでさえ毒で身体を蝕まれた状態なのだ。見知らぬ人から差し出された水を警戒するなと言う方が難しい。私は男性の憂慮を取り払うべく、手にした水袋を傾けて自らの口に含んでみせた。
「……ほらね? だから、安心して飲んでちょうだい」
 ひとつ喉を鳴らし、改めて水袋を差し出すが、男性は私を一心に見つめたまま微動だにしない。
「ここには清潔なガーゼもあるわ。怪我の処置をしましょう。矢が掠った場所はどこ?」
< 32 / 291 >

この作品をシェア

pagetop