年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 ちなみにこの結婚に際し、お母様は先方から多額の支度金を受け取っている。
「はい! 今行きます!」
 私は用意していた手提げ鞄を握り締めると、六年間寝起きした部屋を飛び出した。あらかじめ、支度は全て整えている。部屋の片づけも同様に済ませている。
 今更、感慨にふけるつもりなど更々なかった。それよりも、長く待たせれば、お母様を怒らせてしまうのは目に見えていた。今日くらいは穏便にと、そんな思いがあった。
 私は階段を駆け下りた。
 そうして玄関ホールを視界に捉える直前で歩みの速度を落とし、ゆったりと優雅な所作でお母様とマクレガン侯爵家の使者の前に降り立った。
「お待たせいたしました」
「では、私は馬車で待たせていただきます。積もる話もおありでしょう。母子最後の別れが済みましたら、馬車の方にお越しください」
 使者の老爺はこんなふうに言い残し、一人玄関ホールを後にした。
 これは、使者の気遣いだ。
 私は今日、屋敷を出て先方のお屋敷に嫁ぐ。だからこれが、お母様との別れとなる……。
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