年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 使者が去り、玄関ホールには私とお母様の二人が残った。
 重苦しい沈黙が、この場を支配していた。
「……お母様、お世話になりました」
 一向に口を開こうとしないお母様に代わり、私から口火を切った。
 お母様は答えずに、いつも通り顔の下半分を扇で隠したまま、私を見つめていた。その顔はいつもと同じ無表情で、その瞳にも温度はない。
 諦めはとっくについているつもりだったけれど、別れの今日は、どうしてか胸がツキリと痛んだ。
「今まで、ありがとうございました」
 それでも最後の別れに際し、私は腰を折って「ありがとう」の言葉を選んで告げた。思うところは多くあれど、今までの十五年に対して告げる言葉はやはり、”お母さん”への感謝が相応しいと思った。
 これにも、お母様から返事はなかった。折っていた腰を起こすと、私は物言わぬお母様を玄関ホールに残し、一人使者が待つ馬車に向かった。
 その途中で足を止め、私はおもむろに晴天の空を仰いだ。
 ……お父さん。私の支度金は、お母様の助けになるよね?
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