【過激派刑事ドラマ】四国州

【波紋】

N木が今治東区にあるやくざ組織の男に暗殺された事件の翌日の朝のことであった。

徳常町にある支店に、ガサ入れが入った。

州内と淡路島にある支店で発生したストライキは、収束するどころか日増しにエスカレートしていた。

この日の午後のことであった。

徳常町にある支店では、新居東警察署の刑事たちによる家宅捜索が続いていた。

この時、刑事のひとりがN木が使っている支店長のデスクの引き出しに大量に入っていた
危険ドラッグを若手の刑事が発見した。

さらに、N木のロッカーの中からハーブを吸引する器具が見つかった。

そのまた上に、N木が特別区内と高松市内の支店の従業員さんたちに危険ドラッグを売買していたと見られる書面などが 大量に発見された。

南海道電力は、経営を続けて行くことが困難な状況になった。

従業員さんたちによるストライキが決行されてから数日後のことであった。

この日、ストライキに加わっていない10人の従業員さんが無断で欠勤をした後、行方不明になったことが判明した。

問題の10人に、日名川会を通じてN木から危険ドラッグを購入した疑いが出た。

州警は、10人の従業員たちを薬事法違反の容疑で逮捕状をとって、全国に特別手配をした。

その日の夕方5時過ぎのことであった。

オレは、州警本部にいる本部長に会って、これまでの調査のイキサツを説明した。

本部長室にて…

大きくため息をついた本部長は、オレにこう言うた。

「ストライキは収束するどころか、かえってエスカレートして行くばかりか…そんな中では経営を続けて行くことはより困難になった…契約者が次々と離れて行く…淡路島の支店は、閉店準備に入ったようだ…」
「何とも言えん…」
「達雄、それとは別に、一連の事件のことで何ぞ分かったことはあるのか?」
「本部長、南海道電力の社長と日名川会の親分が暗殺された事件と三豊西区で暴走族のグループが暗殺された二つの事件のことで、新たな事実が判明しました…ふたつの事件は、新居西区朔日市(ついたち)にある例のやくざ組織の男が起こした犯行です…例のやくざ組織は日名川会から絶縁されたやくざたちが集まって結成された組織です…彼らに軍資金を出していたのが…今治東区にある田島組の組長であることが判明しました。」
「田島組。」
「ええ…田島組は、遠い昔に松山のやくざ組織の事務所にダンプカーで突っ込んだ事件を起こしたやくざ組織です…日名川会とも、しょっちゅうもめ事を繰り返していた…そのこともからんではると思います。」
「日名川会と、なんらかのことをめぐって抗争をくり返していたのだな。」
「ええ…その通りです…他にも、南海道電力の関係者と電気料金が滞納されていたことが原因でトラブっていたことも分かりました。」
「そうか…」

オレは、本部長にこれまでのイキサツを全部話した。

報告を終えた後、本部長は『分かった…』とオレに言うて、イスに座って、くるっとイスを回して夕暮れ時の街をながめていた。

本部長室を出たオレは、中央区三島にある事務所に帰って来た。

ここへ来て、南海道電力をめぐる事件は日増しに深刻な状況になった…

ストライキが収束しない…

従業員さんたちは、会社側からの呼びかけを拒否して、徹底抗戦を構えている。

ストライキがエスカレートしたので、淡路島各地にある支店は閉鎖に追い込まれた。

もうアカンな…

南海道電力一社だけではなく、日本全国の電力会社でも契約者離れが始まっている…

もはや、これまでだ…

オレは、そんなことを思いながら事務所の窓に写る風景をながめていた。

遠くに見える製紙工場の煙突から、白い煙がもくもくと空に上がっていた。

その日の夜のことであった。

中央区川之江のアーケード通りの裏の路地で事件が発生した。

オレはこの時、磯原さんと一緒にアーケード通りを歩いていた。

救急車の進路をロチュー(路上駐車)している車がふさいでいるから、進路を空けてほしいとスピーカーで繰り返して呼び掛けているのに、車の所有者が応じなかった。

救急車に乗っていた60代の男性が『車を動かしてくれ!!妻が急病なんだよ!!』と泣きそうな声で叫んでいた。

それを聞いたオレは、磯原さんと一緒に現場に急行した。

オレと磯原さんが現場に着いたときであった。

この時、車の所有者の40代の男が現れた。

60代の男性が『車を動かしてくれ!!』とお願いしているのに、男は酒をのんでいるから出来ないと言うて逃げようとしていた。

ブチキレを起こしたオレは、ドカドカと男のもとへ詰め寄った。

「コラ!!車の所有者!!逃げるな!!」

車の所有者の男は、よれよれの体で逃げ出した。

200メートル先の交差点で、白のイプサム(ミニバン)が飛び出して来た。

(キーッ!!ドスンドスン!!)

救急車の進路をふさいでいる車の所有者の男は、ミニバンにはねられた後、即死した。

ミニバンを運転していた男は、その場から逃走をした。

この時、救急車で搬送することが困難になったので、ドクターヘリに切り替えて中央区三島にある州の救急救命センターへ急病人を搬送した。

急病人の60代の女性は、あと数分遅れていれば生命に関わる重大な事態におちいる危険があった。

問題はなんとか解決したが、現場では州警の刑事たちによる現場検証が行われていたので、オレは捜査に協力することになった。

オレはこの時、救急車の進路をふさいでいたネイビーのボルボの中を調べていた。

そしたら…

「あれ?」
「達雄、どうしたのだ?」
「車の所有者の男…南海道電力の四国中央支店の経理の男やで…」
「どうして分かったのだ?」
「ダッシュボードに、ソラト(太陽石油)のロゴ入りの楽天のクレジットカードがあった…クレジットカードは、法人の名前だ…カタカナでナンカイドウデンリョクと書かれている…あのクソッタレ野郎は、会社のゼニつこて(使って)ガソリン代を払っていたみたいや。」
「経理の立場を利用して、職場のクレジットカードでガソリン代を払っていたと言うことか…」
「ああ、その通りだ。」

そんな時であった。

オレのアローズ(スマホ)にオノさんから電話がかかって来た。

オノさんは、ダンさんと警察署の刑事たちと一緒にみよし東区(東みよし町と三好市の飛び地の部分)の徳島自動車道の吉野川サービスエリアのハイウェイオアシスにいると言うてから、オレにこう言うた。

「達雄さん…今みよし東区の吉野川サービスエリアのハイウェイオアシスにいます…駐車場に乗りあわせで近くのレジャー施設に行った車の所有者4人が車を放置したので、レッカー車で移動をしています…うち…ネイビーのトヨタアクアの所有者が分かりましたので、報告します。」

この時、オレはサービスエリアの駐車場に長時間駐車をしている4台の車のうち1台が南海道電力の従業員の40代の男であったことを聞いた。

「何やて!?それホンマのことか!?オノさん!!レッカー車で別の場所へ移動した車を警察署へ持って行くことはできるのか!?大至急頼むわ!!もし、何ぞ分かったらオレに知らせてくれるで!?ああ、頼むわ!!」

それから10分後のことであった。

吉野川サービスエリアのハイウェイオアシスに、サービスエリアの近くのレジャー施設に遊びに行ってたグループが帰って来た。

4台の車は、全部レッカー車で別の場所へ移動をされたので、彼らはびっくりした。

ミニバンに乗り合わせていた男のグループは、ダンさんとオノさんと警察署の刑事たち10人に取り囲まれた。

ダンさんは、男たちに凄んで行った。

「オラオドレら!!サービスエリアの駐車場に長時間駐車をして、どこへ行ってた!?」
「どこへ行こうといいじゃないかよ!!」
「そうだよ!!」
「オドレら!!そこ動くなよ!!」

ダンさんが、男たちを怒鳴りつけたので、男だちは震えていた。

この時、男たち全員の呼気にアルコールの成分が含まれていると警察署の刑事が言うたので、ダンさんとオノさんは車の中を調べてみた。

この時、車の中からアルコール濃度の高いお酒のビンが大量に発見された。

その上にまた、危険ドラッグが大量に見つかった。

さらにそのまた上に、シンナーやシャブ(覚醒剤)も大量に発見された。

男たちのグループは、いいわけをすることができなくなった。

「オドレら!!飲酒運転に加えて、ジャブもやってたのか!?」
「知らねーよ…」
「オドレら全員飲酒運転と覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕する!!」

男たちのグループは、飲酒運転と覚せい剤取締法違反の容疑でケーサツに逮捕された。

そして翌日のことであった。

吉野川サービスエリアのハイウェイオアシスの駐車場に長時間駐車をしていた車の所有者が南海道電力の従業員で、飲酒運転と覚せい剤取締法違反の容疑などでケーサツに逮捕されたことが報じられた。

それに伴って、企業のイメージが大きくダウンした。

そして、州民の信頼を大きくそこねた。

この時、経営陣どもはマスコミを前にして謝罪の記者会見をひらいた。

本社の副社長と残っている幹部の人間がオイオイオイオイ泣きながらテレビカメラの前でこう言うた。

「このたびは…わが社の従業員が飲酒運転をした上に…危険ドラッグとシンナーと覚醒剤を大量に保有していた上に、服用までしていた形跡があったので、ケーサツに逮捕されたことを心からおわびを申し上げます…わたくしどもは…飲酒運転撲滅のために徹底して従業員さんたちに分かるまで教育をしたのですよ…薬物の問題についても分かるまで徹底して教育をしたのですよ…暴力団関係者とのお付きあいをしてはならないことにも分かるまで徹底して教育したのですよ…問題の従業員さんたちは、厳しい処分を下しました…取り上げるものは全部取り上げた…最後に…ストライキが収束しないので、ストライキを起こした従業員さん全員を強制的に解雇します…ストライキによって生じた損害賠償を従業員たちに請求する裁判を憲法裁判所(最高裁判所にあたる)に提訴する手続きを取りました…1京円(いっけいえん)の損害賠償を従業員たちに請求します…ストライキを起こした従業員どもは甘ったれている…あのクソバカどもは、権利ばかりを主張してばかりいる…あのクソバカどものせいで、会社は破滅だ!!以上!!」

副社長は、従業員さんたちを完膚なきまでにボロクソに言いまくったあと、会見場をあとにした。

記者たちは『ストライキを起こした従業員さん全員を憲法裁判所に提訴するのは本当なのですか!?』『副社長!!答えて下さい!!』『会社は、飲酒運転撲滅のために徹底して従業員さんたちに分かるまで教育したのは本当なのですか!?』『副社長!!』などと言うて、質問ぜめをしていた。

副社長と残っている幹部たちは『ストライキを起こした従業員どもが100パーセント悪い!!』と言うて、その場から逃げた。

そんな中であった。

ところ変わって、JR栗林駅の近くの通りにて…

南海道電力の副社長のひとり娘(9歳)が、学校から家へ向かっていた。

その時、止まっていた黒いホンダフィットを運転していた男から声をかけられた。

「お母さんが急病で倒れたから、一緒に病院へ行こう。」

副社長のひとり娘は、男の言いなりになって車に乗り込んだ。

この時、副社長のひとり娘が誘拐された。

南海道電力の社長室にて…

副社長と残っている幹部たちは、やくざの顧問弁護士と数人のチンピラたちと一緒に打ち合わせをしていた。

その時に、副社長の家から電話がかかって来た。

副社長が電話に出た時であった。

受話器ごしにいる奥さまが、泣きながらひとり娘が誘拐されたことを副社長に伝えた。

「あなた!!急いで帰って来て…(ひとり娘)が誘拐されたの…お願い…」

奥さまからの知らせを聞いた副社長は、びっくりした。

なんてこった…

どうすればいいのだ一体…
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