【過激派刑事ドラマ】四国州

【要求はただひとつ…】

南海道電力の副社長のひとり娘が誘拐された事件を受けて、州警は副社長の住居地がある綾歌西区(丸亀市の綾歌町の部分)を管轄する警察署に捜査本部を設置する命令を下した。

ところ変わって、綾歌西区岡田下に副社長の家にて…

家の応接間には、副社長の奥さんと奥さんのご両親が警察署の刑事さんたちと一緒にいた。

問題の副社長は、奧さんからの知らせを受けたのに、ストライキを起こして営業を止めた従業員さんたちに1京円(いっけいえん)の損害賠償請求の打ち合わせが大事なので、帰宅していない。

まったく…

てめえの娘の命が危ないのに、仕事を最優先にするなんて…

それでも、テテオヤかよ…

オレと磯原さんは、州警の捜査員たちと一緒に副社長の家にいた。

捜査員たちは、逆探知のセッティングをしたあと、誘拐犯の男からの電話を待っていた。

副社長の奥さんのご両親は『ムコが帰って来ないので、どこでなにをしているのか…』と言うてイラついていた。

「一体むこどのは、どこへ行ったのだろうか…」
「(ひとり娘)が誘拐されたと言うのに…」
「あの人は…ストライキを起こしている従業員さんたちを訴えることしか頭にないからダメよ。」
「困ったむこどのだ…それよりも、(副社長のひとり息子・19歳)はどこへ行った!?」
「大学のお友だちと合コンに行くから、晩ごはんはいらないって…」
「親類の家のゼニを使って、やりたい放題しやがって…(副社長のひとり息子)が通っている大学のセンコウがクソバカだから、学生どもがクソバカなんだ…どいつもこいつも(プリプリ…)」

おっさんよ…

1人でプリプリプリプリはぶてんといてや…

その時であった。

テーブルの上に置かれているうぐいす色のプッシュホンのベルが鳴り響いた。

録音担当の刑事さんは、プッシュホンにつながっているテープレコーダーの録音スイッチを押して録音を始めた。

もう1台の逆探知用の黒電話では、複数の刑事さんたちが電話のやり取りを聞く。

電話の応対は奥さまがしていた。

奥さまは、泣きそうな声でひとり娘を返してほしいとコンガンした。

それから40分後のことであった。

オレと磯原さんは、黒のトヨタコンフォートに乗り込んで、先ほどの録音内容を聞いてみた。

誘拐犯の男は、ボイスチェンジャーを使ってい電話をかけていた。

「もしもし…K城でございますが…」
『奥さま…ダンナはどうした!?』
「まだ会社にいます。」
『会社だと…たったひとりのかわいいひとり娘が誘拐されたと言うのに…オドレの家のムコは、お子さんの生命はどうでもいいと言うわけか!?でかいのは図体だけやな!!』
「そんなことよりも、娘はどこにいるのか教えて下さい!!」
『娘の居場所を教えろだと!!そんなに娘の声が聞きたいのか!?分かった…聞かせてやるよ…』

その後、電話口の向こう側から誘拐されたひとり娘さんが恐ろしい叫び声が聞こえた。

同時に、布が思いきり破れる音も聞こえた。

奥さまは、泣きながら電話口の向こう側の男たちにコンガンした。

「やめて!!娘に手を出さないで!!」
『分かった…娘を返してほしいのだったら、州警の本部長に伝えておけ!!娘を返してほしいのだったら、北海道の刑務所で服役中のT原を釈放しろ!!T原は、刑務所内の鎮静房に20年以上も入っている…その間、食事も与えられていない…刑務官は気に入らないことがある度に、T原に暴行を加えた…T原は20年以上もあの狭い空間に閉じ込められたままだ!!あいつは、事件を起こした時心神喪失状態だった…それを検察連中が刑事責任を問えると鑑定書を書き換えた…そして、無期懲役…おれたちの仲間を傷つけた州警は許さない!!要求はそれだけだ…」
「何なのよあなたたちは!!」

(ガチャーン!!)

奥さまは、一方的に怒ったあと電話を切った。

オレは、テープレコーダーの停止ボタンを押してテープを止めたあと、大きくため息をついてこう言うた。

「あーあ、奥さまは、キレてしまったみたいだな…」
「そうだな…ところで達雄、やつらはT原を釈放しろと要求してきたみたいや。」
「T原を釈放しろ。」
「ああ。」
「T原は、田島組の中で一番ワルのチンピラや…21年前に松山で対立しているやくざ組織の事務所にダンプカーで突っ込んだ事件を起こした時、例のダンプカーを運転していた男だよ…他にも…19年前に一般人を拳銃で発砲して殺した事件を起こしている…釈放すれば、再犯の恐れがあるレッドリストに載っているのだよ…どないしよか…本部長の元へ行こうか?」

オレと磯原さんは、州警本部へ行って、本部長にことの次第を話した。

副社長のひとり娘を返してほしいのであれば、北海道の刑務所で服役中のT原を釈放しろと言う要求があったことをオレは本部長に伝えた。

本部長は、今の時点ではT原は釈放できないと答えた。

T原は、19年前に発生した殺人事件で無期懲役の判決を受けた後に広島刑務所へ送られた。

広島刑務所で服役していたが、脱獄事件を起こして逮捕された。

その後、北海道網走支庁にある刑務所へ移送された。

それまでの15年間に、脱獄事件を繰り返していた。

現在は、根室支庁の刑務所に収監されている。

T原は、刑務所内での態度が悪いので、今も鎮静房に閉じ込められている。

本部長は、誘拐犯からの要求には応じないと言うことで、ひとり娘さんの救出と容疑者逮捕に全力を尽くすようにと刑事たちに指示した。

副社長のひとり娘が誘拐されてから3日後のことであった。

副社長は、ひとり娘の生命が危ないと言うのに、ストライキを起こしている従業員さんたちから賠償金を搾取(とる)ことしか頭にないので、クソバカになっていた。

ところ変わって、憲法裁判所にて…

憲法裁判所の裁判長は、副社長の要求通りにストライキを起こしている従業員さんたちに対しまして会社に1京円(いっけいえん)の損害賠償を払うよう命じる判決を下した。

副社長と残っている常務たちは、裁判に勝ったので大きな口を開けて嗤い(わらい)まくっていた。

ストライキを起こしている従業員さんたちは、怒り心頭になっていた。

閉廷から2時間後のことであった。

高松市の本店のエントランスホールにて、ストライキを起こした従業員さんたちによる座り込みが決行された。

従業員さんたちは『副社長と残っている常務たちが憲法裁判所とグルになって、われわれを弾圧した…奴らが1京円(いっけいえん)の損害賠償を払えと言うのであれば、一斉に座り込みをして断固抗議する!!』と叫んだ。

副社長と残っている常務たちは、さらにイコジになった。

その翌日、本店のエントランスホールに州内各地の大学に在籍している就活中の大学生たちがストライキを起こした従業員さんたちに加担したので、ストライキが長期化する恐れが生じた。

その日の夕方4時半頃のことであった。

オレと磯原さんは、ダンさんとオノさんと一緒に高松自動車道の高松中央インター付近の主要州道にいて、検問の立ち会いをしていた。

ケーサツは、四国州特別区・松山・高知・徳島や本州方面から来た車両を1台ずつ調べていた。

インターチェンジから降りて来た車両は、ケーサツの検問を受けていた。

この時オレは、前から3台目に止まっている赤のポンテアックシボレーに目をつけた。

何かおかしいぞ…

赤のポンテアックシボレーに乗っている男二人があやしい…

その時であった。

「アニキ…」
「逃げよう…」

(キキキキキキキ!!グオーン!!グオーン!!)

この時、赤のポンテアックシボレーが検問から逃げ出した。

「ダンさん!!オノさん!!」
「ああ!!あの車!!」
「オノさん!!車にのせてくれ!!」
「分かった!!」
「達雄!!オレも行く!!」

オレと磯原さんとダンさんとオノさんは、黒のマークXに乗り込んだ後、逃げ出した赤のポンテアックシボレーの追跡を始めた。

(キキキキキキキ!!グオーン!!グオーン!!ウーウーウーウー!!)

ところ変わって、国道193号線にて…

赤のポンテアックシボレーと黒のマークXの覆面パトカーによるカーチェイスが繰り広げられた。

カーチェイス開始から20分後のことであった。

(キキキキキキキ!!ブーッ!!ドスーン!!)

逃げていた赤のポンテアックシボレーは、反対の車線に飛び出したはずみで走っていたトレーラーと追突事故を起こした後、フロント部が大きく破損した。

オレと磯原さんとダンさんとオノさんが乗っているマークXが止まった後、大きく破損したポンテアックシボレーへ向かった。

「磯原さん!!ダンさん!!オノさん!!」
「何てこった…」
「遅かったか…」

この時、オノさんが大きく破損して車に挟また男ふたりにシンナーのにおいが立ち込めていると言うたので、オレは運転席の部分に行ってみた。

「達雄さん!!運転席の部分から…シンナーのにおいがしています!!」
「何やて!!」

うう…

強烈なにおいが…

逃げた男ふたりは、シンナーを大量に吸引していたその上に、複数の危険ドラッグを吸引していた疑いが出た。

逃げた男ふたりは、事故を起こした直後に亡くなった。

さらに事故を起こした車の中からシンナーと危険ドラッグと覚醒剤が大量に発見された。

逃げた男ふたりが、薬物を大量に吸引して運転していたことが明らかになった。

事故を起こしたふたりの男は、田島組のチンピラで、男が所持していたメモの中から南海道電力の副社長のひとり娘を誘拐したメモ書きが見つかった。

副社長の娘の誘拐事件は、田島組が組織ぐるみで行っていたことが明らかになった。

そして翌朝、深刻な事件が発生した。
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