【過激派刑事ドラマ】四国州

【人事部長S吉の悲劇】

S吉の妻娘(さいし)がレイプ殺人事件で亡くなってから8日後のことであった。

S吉の妻とふたりの娘の告別式は、事件から8日後に三豊西区内の葬祭会館で執り行われた。

参列者のみなさまは、悲しむどころか冷めた目付きになっていた。

喪主であるS吉が、事件の前後に行方をくらませていた。

参列者たちは、声をひそめて話していた。

S吉は喪主のくせに告別式の日取りを遅らせた上に、女とラブホでしけ込んでいるのではないのか…

そんな声が聞こえていた。

S吉の妻の実家の親族一同は、S吉の家を許さないと激怒していた。

S吉が妻娘がレイプ殺人事件で亡くなる前後に、どこにいたのか分かった。

S吉は、7月に発生した南海道電力本社のビルジャック事件が発生した日からノイローゼを理由に休職をして家に閉じこもり気味になっていた。

その時に、妻と大ゲンカを起こしたあげくに家出して行方不明になった。

その後、東四国市(鳴門と板野郡後に部分)の警察署に保護された。

そして、東予東区(旧東予市の市街地を中心とした地域と小松町の部分)の実家に帰った。

S吉の父親が南海道電力本社に辞表を出したが、会社側はS吉に任せているお仕事とS吉にしかできないお仕事があるから復職してほしいと言うた。

結局、双方が平行線をたどっていたので、辞表は受理されていない。

S吉は、会社と平行線の状態を放置したまま東予東区の実家に帰ったあと、区内にある印刷工場へ再就職をした。

S吉の妻娘の告別式の翌朝のことであった。

食卓には、S吉とS吉の父親と姉夫婦がいて朝ごはんを食べていた。

この時、S吉がごはんをたくさん残したので、姉は心配そうな声で言うた。

「あれ、K彦…もうごはんを食べないの?」
「食べたくねえのだよ…」
「食べたくないって…ごはんもみそしるもおかずも食べていないわよ…」
「ふざけるなよオドレ!!食べたくねえと言ったら食べたくねえのだよ!!」
「食べたくないって…朝ごはんも食べなかったらお腹がすいてしまうわよ…今日中に仕上げるお仕事がたくさんあるかもしれないのよ。」
「ふざけるなよ!!オドレは何がしたいのだ!?」
「何がしたいって、ごはんを食べてほしいからごはんを作ってあげたのよ…(S吉の妻)さんとのだよ結婚生活がうまく行かない…離婚をしたいと言うから…」
「ダマレ!!」
「わかった…せめてごはんだけでも食べて行ってよ…会社には朝ごはんを食べていないから少し遅れると電話をしておくから…白いごはんに卵のきみを落として食べれるようにするから…お魚のみをとってあげるから…」
「そこまでしていらん!!」
「朝ごはんを食べて行きなさい!!」
「やめろ!!」
「あなた!!」
「やめろと言うのが聞こえないのか!?」

姉にごはんを投げつけたS吉は、家を飛び出して行った。

S吉は、区内にある印刷工場に就職したけど、勝手に仕事を休んでいた。

家を飛び出したS吉は、印刷工場へは行かずに丸亀区の競艇場行きの無料送迎バスに乗った。

実際に印刷工場に勤務をしたのは、わずか2日だけ…

S吉に、まっとうな暮らしなんて猫に小判だと思う。

その日の午後のことであった。

オレは、S吉が勤務をしている東予東区内にある印刷工場へ行った。

工場の人に聞いたところに、S吉は無断で欠勤をしていると工場の人が言うたが、くわしい理由は言わなかった。

S吉が印刷工場に勤務していたのは2日だけであった。

オレが思っていた通り、S吉はひとつの仕事が長続きしないタイプだと言うことが分かった。

この時、印刷工場の作業員のひとりが『S吉のことならオレ知ってるっす…』とオレに言うたので、どういうわけなのかを聞いた。

「S吉のことを知ってると言うだけど、目星はついているのか?」
「あのクソバカ、今朝方壬生川駅の広場に停車していた送迎バスに乗って、丸亀の競艇場前へ行った…」
「競艇場…」
「あのクソバカはギャンブルに狂ったけん、ここに来ることないと思うよ。」
「ほな、もうやめると言うことか…」
「そうだよ。」
「ムリムリ、S吉はなにやってもアカン性格だよ…大学にいた時にシューカツしてへなんだけん、コネで南海道電力に入社したのだよ。」
「コネ入社…そのコネと言うのはだれのことを言うているのだ?」
「決まっとるやないかえ、S吉のクソッタレジジイだよ。」
「あのクソッタレジジイは、やくざの顧問弁護士をつこて、南海道電力にゼニをばらまいたのだよ…コネつこて、せこいことをしたから居場所をなくしたことなんぞ分からんのや…あいつはどこのどこまで南海道電力にしがみついているのだか…」

従業員たちは、口々にS吉の悪口を言いまくっていた。

オレは、従業員たちにこう言うた。

「それはそうと、問題は印刷工場のことだけど…あんたらは、S吉がいないので困っている状況ではないみたいやな。」
「ゼーンゼン…サボタージュのS吉と一緒に仕事がしたいなんて思ってねーよ…」
「オタオタしているのは社長だけ…」
「せやせや。」
「社長は困る困るとひっきりなしにいよるけど、オレたちにはわかんねーよ。」
「…と言うよりも、即戦力にならないクソバカを工場に置いておくこと自体が問題なのだよ。」
「せやせや。」
「わかった…もういい…」

オレは、従業員たちにこう言うた後、工場をあとにした。

S吉はサボタージュだから、役に立たない…

それなのに、工場はS吉にいてほしいとほざいている…

まったく…

ムジュンしとるわ…

オレは、こうつぶやきながら東予東区内を歩いた。

(ギューン!!バババババ!!バシャーン!!ワーッ!!)

ところ変わって、丸亀区内にある競艇場にて…

オレが着いた時、7レース目が終わった頃であった。

オレは、印刷工場を無断で欠勤したS吉の素行調査をするためにやって来た。

S吉は、競艇場へ入り浸りになっていた。

S吉は、全レース大負けをきっしたので頭がかっとなっていた。

オレは、S吉の行動をスマホのカメラでひっきりなしに撮影した。

撮影された写真は、本部長のガラホにメールで送った。

競艇場を出たS吉は、とぼとぼと歩いてJR丸亀駅の高架橋の下の駐車場に行った。

どうやら、そこで野宿をするみたいだ。

今のS吉は、職場や家庭どころか南海道電力の本社にもめいわくをかけて逃げていたので、もうアカンやろ。

翌朝のことであった。

S吉は、区内飯山(はんざん)町に住んでいる友人の家へ行った。

おそらく、S吉は友人にカネのムシンをしていると思う。

オレは、S吉と友人の会話を録音していた。

S吉と友人は、こんな会話をしていた。

「なあ頼むよこの通り…オレ…アイパッド買うのだよ…だけど使い方が分からない練習したいのだよ…7日で使いこなせるようにがんばるから…貸してくれよぉ…」
「だけどな…」
「頼むよ…この通り…大学にいた時にお前が仕送りが止まったので困っていると言うた時、カネ貸してやったじゃないか…」

友人は『分かった…大事に使えよ…』と言うて、S吉にアイパッドを貸した。

「やったー、オレ、がんばって練習をするから…」

S吉の内心は、昨日の負けた分を取り返せると思ってうぬぼれていた。

オレは、S吉のあとをつけて競艇場へ行った。

S吉は、敷地内にいる香具師(やし)の男の元へ行って、アイパッドを出した。

アイパッドを受け取った香具師の男は、S吉に4万円を出した。

4万円を受け取ったS吉は、競艇場へ入って行った。

オレは、香具師の男の元へ行って、S吉のことを聞いた。

「あっ、いらっしゃい…兄ちゃんも軍資金に困っているのかい?」
「オレは州警の本部長にやとわれている探偵だ!!」
「えっ…州警…」
「コラ!!大きな声を出すんじゃねえよ!!オレ…人探しているのだよ!!」
「えっ?」
「すっとぼけんじゃねえよ!!さっきアイパッドを持ってきた男がおったな!!オレはあの男にアイパッドを貸したもんや!!」
「アイパッド…」
「コラワレ!!いて回したろか!!オレはあのアホンダラからアイパッドを取り返しに来たのだ!!アイパッドださんかいコラ!!」
「出しますよ…その前に4万円…」
「4万円くらい出すわ!!とっとけ!!」

4万円を香具師に払ったオレは、アイパッドを取り返した。

そして、飯山町で暮らしているS吉の友人にアイパッドを返した。

その後オレは、S吉の素行調査を続行した。

夕方5時過ぎのことであった。

この日の全レースが終了した。

場内から出てきたおっちゃんたちが、おけら街道を歩いて無料送迎バスの乗り場へ向かっていた。

案の定、S吉は全レース負けた。

負けた分を取り返すことができなかったので、やけくそになっていたようだ。

途中で足を止めたS吉は、ガラホを取り出してどこかへ電話をしていた。

S吉は、たぶん女のところへ電話をしているに違いあらへん…

オレはそう思っていた。

オレは、S吉を追跡していたが、途中の丸亀駅のタクシー乗り場で奴を見失った。

S吉を見失ったオレは、体がクタクタになったので、中央区三島の事務所へ帰ろうとしていた。

その時に、事件が発生した。

確か、夜の9時半過ぎのことだったと思う。

オレのアローズ(スマホ)にダンさんから電話がかかって来た。

「ダンさん…今、丸亀区内にいる…どないしたん…えっ、仲多度北区で…レイプ殺人…S吉がレイプ殺人で逮捕された!!」

この時、仲多度北区(多度津町と善通寺市の部分)の桃陵(とうりょう)公園で、S吉がホステスの女性をレイプして殺した事件が発生したことをダンさんから聞いた。

オレは、急いで仲多度北警察署へ向かった。
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