Your Princess
膝を折り曲げ、座った状態で。
首も少し引っ込めて。
この状態がずーーと続いている。
具合が悪くなってきた。
このままでは吐きそう…という思いが何度もよぎって。
思いきって箱から出ようかな…と思ってしまう。
もうちょっと、我慢しよう。
でも、具合が悪い。

ぐるぐると頭の中で考えているうちに。
車が止まった。
蓋が開くと。
「ごめんね、カレンちゃん。もう出て大丈夫だよ」
クリスさんが言った。

体中がカッチカチだ。
箱から出て。
外に出させてもらう。
あぜ道に、クリスさんが運転するトラックが止まっている。
周りは畑一色だ。
「ここからは助手席に乗って。帽子は目深にかぶってもらっていいかな? 髪の毛は帽子に入れて。あと、フェイスベールは取ってほしい」
「え…」
「申し訳ないけど。フェイスベールしていると目立つんだ」
痣のほうが…目立つんじゃ? と言いたかったけど。
反論している時間はなさそうだ。
とにかく、クリスさんの言われた通りにする。

再びトラックが動き始める。
「もう少しで着くから」
そう言って。
クリスさんは急に右折した。
思わず身体が右側に倒れそうになる。

車が普段通らないのか、道がデコボコしていて。
トラックが揺れる。
どすん、どすん。
我が家はそんなに町外れだったのかな…と不安になる。
一ヵ月前。
どうだったけ? こんなに揺れたっけと記憶を思い起こすけど。
どうして、覚えていないのだろう。

しばらくすると。
見覚えのある門が見えてきた。
だが、記憶に残っている屋敷がない。
「え…」
屋敷がなかった。
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