Your Princess
第5章 コイッテナンデスカ
その日は、休日で。
私は、食堂で朝食を食べていた。
パンケーキを運んできたシュロさんは「どうぞ」と言ってテーブルにお皿を置いた後。
じっと私を見た。
「蘭が結婚なんてねぇ…」
感慨深そうに言う。
「もう、シュロは用が済んだらあっち行ってて」
イライラしたように、後ろに立っていたサクラさんが言った。

パンケーキを食べていると。
いきなり、扉が乱暴に開いて。
「おいっ、カレン」
と大声で誰かが入ってくる。

ビックリして身体が震えた後。
声のするほうを見ると。
やっぱり蘭だ。
食堂で、蘭に会うのは初めてだった。
「おい、今から俺と出かけるぞ」
「はい?」
3日ぶりに会ったかと思えば、この男はいきなり何を言うのだろうか。
3日前に会ったときは、いつものように「俺は忙しいんだ」と言ってすぐに姿を消したのに。
今日は、私の前に立ったまま動かない。
「お出かけ…ですか?」
「さっさと食べて、支度しろ。おいっ、シュロ」
そう言うと。
蘭は厨房の方へ行ってしまう。

「あら、デート? カレン。支度しましょう」
「…え」
サクラさんは、にんまりと笑う。
デートという最悪の言葉に再び身体をぞわりと震わせてしまう。
蘭は厨房でシュロさんと何か会話した後、こっちへ戻ってきた。
「おいっ、サクラ。コイツには俺の服貸してやるから、動きやすい格好をさせろ」
そう言って、蘭は大急ぎで出て行った。
「なによ、アイツ。デートなんだから、お洒落させろってーの」
と、毒を吐くサクラさんだけど。どこか嬉しそうだ。顔がニヤニヤしている。
私は、一瞬にして食欲がなくなり、憂鬱モードへと突入したのだった。
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