Your Princess
第6章 謎の男、再び
珍しく、朝から雨が降っている。
我がティルレット王国で、朝から雨が降るのは珍しい。
雨が降るとしたら、いつだって夜で。
こんな朝からずっと雨が降るのは本当に珍しい。

薄暗い空間。
湿度が高く身体がだるい。
本当ならば、朝からライト先生が来て授業をするはずだったのに。
この雨のせいで、ライト先生が来られないと連絡があった。
…と、サクラさんに言われた。
急な休みのせいで。
私は何をしようかと考え。
午前中は勉強をしたり、読書をして。
昼食後は、ピアノの練習をしていた。

音のない屋敷で。
ピアノの音が虚しく鳴り響く。
玄関前のホールに置かれたグランドピアノを引き続けていたが。
何だか、ため息ばかり出てくる。
こんなに雨が降るとダルいとは思わなかった。

楽譜を眺めながら。
何度目かのため息をついていると。
トントンッと、玄関の扉から音がする。
私は手を止めて、扉に注目する。

トントンッ。

多少、乱暴にも聞こえるノックの音に。
誰だろうと考えてしまう。

この屋敷にお客さんなど来たことなんて一度もない。
少なくとも私は見たことがない。
もしかして、渚くんか、クリスさんだろうか。

そう思って。
扉を開けた。

ガチャ。

扉をゆっくり開けると目に入ったのは金髪だった。
見慣れない姿に思わず、「きゃっ」と悲鳴をあげてしまう。

目の前に立っているのはサングラスをかけた男の人だった。
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