Your Princess
寝る前に、鏡台の前で髪をとかしていると。
「カーレーン」と勢いよくサクラさんが入ってきた。
「計画が決まったわ! 今度の休みの日にしましょう」
満面の笑みでサクラさんが言った。
私は櫛を鏡台の上に置いて。
ベッドに座る。
隣にサクラさんも座った。
「休みの日に、カレンが体調不良ってことにして。この屋敷から抜け出しましょっ」
楽しそうに話すサクラさん。
じっと見ていると、「なあに?」と訊かれてしまう。
「嬉しそうですね、サクラさん」
「勿論よ。カレンが協力してくれて本当に良かったわ」
協力…という言葉に。
胸がチクりと痛んだ。
悪いことをしているわけじゃないのに。
どこか胸が痛む。
どんな表情をしていたのかはわからないけど、サクラさんは「いやあね、そんな顔しないでよ」と笑われてしまった。
「クリスの時とは違って私は賢いから大丈夫よ。それに、カレンにもいい話があるのよ」
「私に?」
「アズマさんの目撃情報があるんですって」
ドンッと心臓が跳ね上がった。
「お…お兄様の目撃情報?」
この一年以上、お兄様の目撃情報は一切なかった。
「ええ。私の用事が済んだら、目撃情報があった場所へ行ってみましょうよ」
そう言って、サクラさんは微笑んだ。
「当日は私の言う通りにしてね。じゃあ、おやすみ」
サクラさんは部屋から出ていく。

「お兄様…」
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