私のご主人様~ifストーリー~

視線を向けられたけど、反対することもない。

笑顔で頷くと、季龍さんは用意されたペンを握る。

ペンを置いた季龍さんから婚姻届を渡される。当たり前だけど、半分記入されたそれに思わず頬が緩んだ。

っと、いけない。私も…。

ペンを手にとって、名前を書こうとした手を止める。

そうだ、先に聞かないと。一度ペンを置き、季龍さんに視線を向ける。

「季龍さん、1つだけ。私からお願いがあります」

突然手を止めた私に、部屋の空気に緊張が走る。

「なんだ?」

季龍さんは冷静さを保った声で続きを促してくれる。

「私は、ここを離れてからずっと、“葉月琴音”として生きてきました。でも、今の私は“葉月琴音”と名乗ったまま生きていくことは出来ません」
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