私のご主人様~ifストーリー~
この名前を使い続けることは、私の足取りをたどれる道になってしまう。
…焔の将来に何らかの障害を与えてしまうかもしれない。
そうなっては、何も告げず姿を消した意味がなくなってしまう。
「だから、“宮内琴葉”の名前で、貴方と籍を入れさせてください。お願いします」
「構わねぇよ。お前自身が俺の隣に並ぶなら」
許可をもらって、もう一度ペンを握る。
今度こそ空欄を埋め、ペンを置いた。
この瞬間、部屋中からどっと、ため息がこぼれた。
「何を言い出すかと思えば…」
「心臓にわりぃ…」
口々にこぼれる安堵の言葉に首を傾げる。
私は何を心配させていたんだろう?
そう思っていると、苦笑いの信洋さんが記入された婚姻届を受け取って、大事そうに封筒にしまう。