求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

「俺は何を貸す約束をしてた?」

あの時、高野に何て言っただろうか。パニックになっていた中でのことなので細かい内容まで覚えていない。

「……図面ケースだったかな。でももう手に入ったから気にしないでね」

答えながら気持ちが沈むのを感じていた。

(嘘を言っちゃった……)

覚えていないというのもおかしな気がして、咄嗟に借りてもそこまでおかしくないであろう仕事関係のアイテムを出した。

そもそも借り物と言うのが嘘なのだが、それを正直に言えば、ではなぜ休日に電話したのかを問われる可能性がある。

真実を誤魔化すために嘘を重ねている。周り全てが行き止まりになるような、追い詰められた感覚になっていた。

結衣の気分の重さが移ったように、遥人も沈んだ表情で何か考えている。

(忘れているときのこと、気になってるんだよね)

一見元に戻ったように見えても、本人は日々葛藤しているのだろう。憂いを帯びた横顔を眺めていると遥人が不意に結衣の方を向いた。
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