求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「俺さ、事故当日のことも覚えてないんだ」
「才賀君は車でどこかに行こうとしていたって聞いたけど」
「そう。人に会う約束をしていたみたいだ」
ドクンと鼓動が跳ねた。
「あの、その相手って……」
遥人は何か手がかりを掴んでいる? それで結衣から何かを聞き出そうとしているのだろうか。
緊張しながら、なぜか顔を強張らせる遥人の返事を待つ。
「……相手とは連絡が取れていて、事情は話してある」
「え?」
思わず驚きの声を上げた結衣に、遥人が怪訝な顔をする。
「どうした?」
「ううん……何でもないよ……その、相手の人と事情を話せてるのなら良かった」
内心の動揺を隠し、結衣は笑顔を装った。けれど頭の中は疑問で埋め尽くされている。
あの事故の日、遥人は結衣を迎えに来る途中に事故に遭ったのだと思っていた。
しかし実際は、別の誰かに会いに行く途中に起きた出来事だった。
(どうして? 誰と会う約束をしていたの?)
既に事情を説明してあるということは、かなり親しい関係の相手のはず。
(才賀君は事故に遭ったから、私を迎えに来なかったわけじゃなかった?)
もし何も起きなくても、その“誰か”に会う為に結衣のところに来るつもりはなかったのかもしれない。