求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「……本当は間違ったんじゃないだろ?」
ドクンと鼓動が跳ねる。
(どうして見抜かれるの?)
遥人の鋭さに慌てながら何か言い訳をと必死に頭を回転させる。
そのとき電車が急停車をした為、小さな悲鳴が上がり、よろけた人たちの圧力が一気に襲って来た。
結衣の立ち位置の直ぐ隣には手すりがある。そこに肘が押し付けられ、かなり痛い。
「いっ……た」
堪りかねて声を漏らすと、ぐいと体を引き寄せられた。
瞬く間に遥人の腕に囲われるような体勢になっていた。
(う、うそ!)
彼に他意はなく、痛がる結衣を庇ってくれているのだというのは分る。
だけどあまりの密着度に、動揺は最高に高まり、逆上せてしまいそうだった。
想いを伝えあったとき、遥人に抱きしめられた。あの時もドキドキしたけれど今はそれ以上かもしれない。
好きな相手と触れ合い、想いは否応なしに高まっているのに、その気持ちを伝えられない。気付かれる訳にもいかない。
守って貰えて嬉しいのに、それ以上に切ないのだ。
(落ち着いて。才賀君にとってはただの人助けなんだから……)
何度も自分に言い聞かせる。
遥人の顔を見ることが出来ないまま、ぎゅっと固く目を閉じた。