求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
けれど、実は自分のことだけでいっぱいいっぱいで、結衣たちにキツイのも余裕がないからだったとは。遥人から言われなければ絶対に気が付かなかった。
『ここの部署で女性建築士は瀬口さんひとりだから。しっかりしなくちゃとかプレッシャーがあるのかもね』
『そんな気にすることないのにな』
『女性だから駄目って思われたくないんだよ。この会社、まだまだ男社会だからね』
表立っては平等だけど、特に年齢が高い役職者たちは女性はフォロー役といった認識がある。
福利厚生もよく、給与面での条件も良い。
親会社所有のオフィスビルは洗練されていて過ごしやすい。
結衣は職場環境に満足しているけれど、瀬口梓のような立場の女性は違う思いを持っているかもしれない。
遥人も思いあたることがあるようで『そうだな』と頷いた。
『瀬口さんの事情は分かったよ。私もなるべく協力するから』
『悪いな、いつもこっちの都合ばかりで』
遥人はやや気まずそうだ。
と言うのも建築士とアシスタントの関係は結構微妙だからだ。
結衣たちアシスタントは無理な仕事や雑用を何でも押し付けて来られることに不満があるし、遥人たち建築士の多くはは自分達に比べてアシスタントの業務は気楽だと思っている。
結衣と遥人が仲良くなれたのは、ひとえに同期だからだ。そうでなかったら愚痴を言うなんて絶対出来ない距離感。
でも、そんな関係は良くないんじゃないかと常々感じていた。
『本来建築士とアシスタントは協力するものなんだよね。才賀君が彼女のこと教えてくれてよかった。誤解して険悪になるより、助け合って仲良く働けた方がいいものね』
結衣の言葉に遥人は嬉しそうに微笑んだ。
彼はその後、結衣の仕事を手伝ってくれたので、ぎりぎりだけれど同期の飲み会に参加出来た。
揃って遅刻したふたりを、同期の仲間は歓迎しながらも怪しんで、『ふたりでどこか行ってたのか?』と結構からかわれたものだった――。