求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
忘年会当日。朝からてきぱきと仕事を片付けたおかげで、午後には目途がついて来た。

心配していた突発的な問題もなく安心し始めた五時過ぎに、結衣の内線電話が鳴った。

「建築デザイン部、水島です」

『受付、佐藤です』

かけて来ているのは顔見知りの先輩社員だった為気安い口調だ。

「お疲れさまです」

『水島さんに来客です。場所を取ってないようなので、ロビーの方に案内したので』

結衣は内心首を傾げた。今日は来客の予定はないはずだけど。

「あのお客様の名前は?」

『北桜さんとおっしゃってたけど』

「北桜……」

『若い身なりの良い女性で、約束しているって。ではよろしくね』

スケジュールに入っていない来客だが、入力忘れはよくあることだし、相手の身なりが良いとのことなので、受付で不審に思わなかったのだろう。

新たな来客があったのか、慌ただしく電話は切られてしまった。腑に落ちないながら結衣は席を立ち一階のロビーに向かう。

(北桜さんって聞いたこともないんだけど)

実はセールスとかだったら嫌だなあと少し不安になりながら、エレベータに乗り込んだ。

一階の総合受付の奥に、パーティションで仕切られた打合せコーナーがある。

相手の顔は分からないけれど、若くて身なりの良い女性をヒントに視線を巡らす。

(あ、あの人だ)

直ぐに分かった。とても目を引く美人が結衣をじっと見ていたのだ。

軽く会釈をしてから彼女が座っている席に向かう。だけど顔を見てもやはり覚えがない相手だった。

「お待たせいたしました。水島です」

彼女の対面の椅子の横で立ち止まり、挨拶をする。しかし想定外の反応をされた。

仕事で尋ねて来ているなら立ち上がって挨拶を返すところだが、彼女は座ったまま何か言いたそうな目で結衣を見あげているのだ。

(あれ……もしかして、仕事関係じゃない?)

けれど、プライベートだった場合ますます分からなくなる。

人違いをしているようではない為、とりあえず「失礼します」と言い椅子に座る。
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