未明の三日月 ~その後

「努力?どんな風に?」

美咲は 聞いてしまう。

詩帆を産むまでは、美咲も 麻有子と同じように 佳宏を愛していたから。
 


「智くんが帰ってくるときは ちゃんとお化粧して きちんとした服で迎えるの。家だからって、だらしない格好はしないわ。」

麻有子は 少し得意気に言う。
 
「えー。そうなの?私 外に出ない日は ジャージのままだよ。化粧なんて 滅多にしないし。顔洗わない日もあるよ。」


美咲の 正直な言葉に、麻有子は 声を出して笑う。
 

「顔も洗わない美咲を 抱いてくれるご主人に 感謝しないとね。」

と麻有子は言った。
 

「私 お料理も 頑張っているわよ。お惣菜は使わないし。前の会社の時は、智くんにもお弁当 作っていたの。」

麻有子の言葉に、美咲はハッとする。

つわりをきっかけに、美咲は 料理も手を 抜いていたから。
 

「麻有子、部屋も 綺麗にしているよね。」

美咲は 自分の家の 埃の積もった棚を 思い出していた。
 


「家族って お互い様じゃない。自分が できることを頑張れば、相手から返ってくるわ。」

麻有子の話しは、美咲の 目を醒ました。
 


佳宏は、一度も 美咲を責めたことがない。

いつも美咲を許して、待っていてくれた。


詩帆にも、もっと 係りたかったのに 美咲が手を出させなかった。


それでも佳宏は 黙って 美咲に従ってくれた。
 


「麻有子。私 何か 気持ちを 切り替えられそう。ありがとう。」

美咲は 胸がいっぱいで 少し涙汲んでいた。
 
 


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