さよなら虎馬、ハートブレイク
《…梅のつぼみもほころび始め、寒さの中にも春の息吹が感じられるようになりました。
本日は、私たち卒業生のために、このように盛大で心温まる卒業式を挙行していただき、誠にありがとうございます。また、ご多忙の中ご出席いただきました、ご来賓・保護者の方々には、心よりお礼申し上げます》
「キャ——————藤堂先輩ファンサして!!」
《在校生お静かに!!》
「手ぇ振って———!」
「留年! 今からでも一緒に私たちともう一回高校生してください!!」
「ボタンくださいぃいいぃっ」
《あたたかい声援、ありがとうございます。
とりあえず一言言わせて頂きますと成績首位なんで留年出来ませんごめんなさい♡》
またもや悩殺スマイルを繰り出す藤堂先輩の発言に、野次を飛ばしていた熱狂的女性陣の多くが館外追放を余儀なくされる。
事態が収束し、やっとまた本来あるべき式に戻ったところで、先輩は気を取り直したようにそっとマイクに唇を寄せた。
《さて、時が経つのは早いもので、真新しい制服に身を包み、希望と不安で胸をいっぱいにして臨んだ入学式から、早三年。思い返せば、色々なことがありました》
ぶかぶかの制服に腕を通して通うと心に決めた、慣れない学校。家族との確執、予想だにしない未来。
先輩が伏し目がちに告げるスピーチには、ここにいる誰もが共感する環境になぞらえた彼のこの三年間の過去が込められていた。
それを知るのは、きっとこの会場でもたった一人だけしかいない。鼻をすする声、顔を覆ってしまう者。
その中で背筋を正して聞き入っていた私は、
顔を上げた先輩と目を合わせた。
《———これからの翔青高校を担う、在校生の皆さん。
皆さんとは、部活動、行事、それ以外の局面でも共に同じ時を過ごしてきました。自分なりに導き出した答えでも、皆さんに上手く伝えることが出来なかったかも知れません。しかし、皆さんがいてくれたお陰で、少しでも立派な先輩になろうと努力出来たことは、間違いありません》
これから何度も大きな壁にぶつかると思います。そんな時には、周りを見渡して、熱い情熱で支えてくださっている、先生方・友達・家族の存在を、もう一度思い出し、困難に立ち向かっていってください。
そして、忘れないでください。
例え隣にいなくても、あなたの努力を見守っている誰かが必ずいることを。
《最後になりましたが、今までお世話になりました、校長先生をはじめとする諸先生方、友人、家族、在校生のみなさんに改めて感謝するとともに、翔青高校の更なる発展を卒業生一同心よりお祈り申し上げ、答辞とさせていただきます。
—————————卒業生代表、藤堂真澄》