【女の事件】とし子の悲劇・2~ソドムの花嫁
第17話
9月1日のことであった。

アタシは、ことでん志度線の電車と100円バスを乗り継いで屋島の展望台へ行った。

レモン色のTシャツとインディゴブルーでピンク色の花のししゅうがついているジーンズ姿のアタシは、赤茶色のバッグを持って、頂上のバス停から屋島水族館まで歩いて行った。

ところ変って、屋島水族館にて…

アタシは、バス内で購入した水族館のチケットを入口で出して、水族館に入った。

うすぐらい館内に、緑色のランプがあかあかと灯っている水槽の中で、魚たちがたくさん泳いでいた。

館内に、カップルさんたちや家族連れのお客さまたちがたくさん来ていた。

アタシは、幸せイッパイのカップルさんや家族連れを見た時アタシは、顔が曇った。

アタシは、ダンナからうけたきついDVとレイプが原因で今現在も心身ともにボロボロに傷ついて苦しんでいた。

だから、新しい恋をしたいと言う気持ちはない。

アタシは、そんなことを思うだけでも悲しくなったので、午後2時半過ぎに出た。

アタシは、帰り道のことでん志度線の電車の中でくすんくすんと泣いていた。

夕方5時頃に高松市内に戻ったアタシは、夜8時に予約のお客さまが1件入っていたので、早めにデリヘル店に出勤した。

9月2日は、アタシの生理休暇であったので、深夜0時までの勤務となっている。

「おはよう。」
「とし子さん、おはよう。」

アタシは、赤茶色のバッグを鏡台の台の上に置いたあと、インディゴブルーでピンクの花のししゅうがついているジーンズを脱いで、鏡の前に座った。

鏡の前に座ったあと、レモン色のTシャツを脱いだ。

Tシャツの下は、白のブラジャー・ショーツを着けている。

アタシは、赤茶色のバッグの中からメイク落としの液体の容器を取り出して、鏡台の備え付けに置かれているコットン入れからコットンを取り出した。

そんな時に、アタシの横に座っているピンクのブラジャー・ショーツセット姿でメイクをしている女のコがアタシに話しかけた。

「とし子さん。」
「なあに?」
「今朝のテレビのニュースを知っていたらと思って、お聞きしたいのですが…」
「9月1日は防災の日だから、防災訓練のニュースのことかなァ?」
「違います…オレンジタウンのことです。」
「オレンジタウンって…」
「オレンジタウンの落書きだらけの家のニュースですよ…家の住人たちが問題の家の主に対して立ち退きを求めていたのに…立ち退きに応じなかったので、住人が次々と引っ越しをしたことよ…オレンジタウンの近辺に、警察だけじゃなく陸上自衛隊までも投入して、強制立ち退きができるようにするための準備に入ったそうよ。」
「強制立ち退き…それ、本当のこと?」
「うん。」

この時アタシは、ダンナの家が強制立ち退きの準備に入っていることを知った。

もう、そこまで来たみたいね。

アタシの気持ちは、さらに激しく動揺していた。

しかし、今のアタシはオレンジタウンで起こっていることなんかどーでもよかった。

アタシは、メイク落としをつけたコットンでメイクをきれいに落とした後、ひと呼吸置いて、新しい色のリップとアイシャドウをつけていた。

9月2日は生理の日なので、デリヘル店はお休みであった。

ファミマのバイトは夜からなので、日中はマンションの部屋で寝ていた。

毎晩アタシは、雑木林で恐ろしい覆面をかぶった男に追われる夢を見ていた。

ヤダ…

また雑木林で怖い覆面をかぶった男に追われる夢が出てきたわ…

何なのよ…

白のブラジャー・ショーツセット姿のアタシは、ふとんから起き上がった後、ほがそ(ぐちゃぐちゃ)の髪の毛を右手で思い切りかきむしっていた。

(ピンポーン…ピンポーン…)

この時玄関のベルが鳴っていた。

アタシは、白のブラウスをはおってから玄関に行った。

「どなた?」
「とし子…母さんよ…」

(ガチャッ…)

母の声を聞いたアタシは、ドアを開けた。

「お母さん。」
「とし子…少しの間だけかまん?とし子の今後のことをふくめて、お話があるのよ。」

母が部屋に入ったあと、アタシはドアを閉じてロックした。

ちゃぶ台のそばに敷かれている座布団に母が座った。

アタシは、冷たい麦茶を母に差し出した。

母はアタシに、ダンナがアタシが原因で結婚するはずだったカノジョとの結婚を消されたことを今でもうらんでいると伝えた後、アタシに離婚後はどうしたいのかを聞いた。

「とし子…とし子はしゅうさくさんと離婚をするつもりでいるのね。」
「つもりじゃなくて、離婚したのよ!!あの甘ったれバカは、ちょっとでも気に入らないことがあれば、アタシに八つ当たりしてうさを晴らしているのよ!!アタシは心身ともにズタズタに傷ついているのよ!!お母さん、アタシは再婚なんかしたくないのよ!!それなのに何でアタシに再婚を勧めるのよ!!お母さんは、女の幸せは結婚して子供を産むことだと言いたいのかしら!?」

アタシの言葉を聞いた母は、その場で泣き出した。

「ふざけるな!!都合が悪くなったら泣いて許しを乞うわけなのね!!」
「とし子…許して…」
「イヤ!!一生許さないわよ!!」
「母さん…とし子にもうしわけないことをしたからあやまっているのよ…」
「どんなにあやまってもダメよ!!壬生川で暮らしていたときのダンナと離婚したあと、アタシは再婚をしたくないと言うたのよ!!それなのに、どうしてアタシに再婚を求めたのよ!!」
「どうしてって…おとーさんがどうしてもとし子の花嫁姿が見たいと言ってたから…」
「おとーさんは、アタシの花嫁姿を見ることしか楽しみがないと言いたいのね!!」
「とし子…おとーさんは…他に楽しみがないのよ…朝から晩まで働いて、職場と家庭の往復しか知らないのよ…」
「バカみたいだわ!!おとーさんとおかーさんは、アタシばかりをエコヒイキしていたことが原因で兄たちから反感を受けていることに気がついていないわよ!!何とか言いなさいよ!!」
「とし子…おかーさんとおとーさんは、許してもらえなかったら生きて行くことができないのよ…」
「それじゃあ死ねばいいでしょ!!」
「ひどい…ひどい…」
「そんなに許してもらいたいのであれば、アタシを34歳の頃まで戻してよ!!アタシは、結婚以外の生き方を望んでいたのよ!!アタシの人生をめちゃくちゃにしたから、一生うらみ通すわよ!!アタシ、三原の家には帰らないわよ!!おとーさんの遺産相続をすべて放棄するわよ!!もうたくさんよ!!もうイヤ!!」

母は、アタシにただひたすら許しを求めていたが、アタシは『死にたきゃ死になさいよ!!』と言うて怒っていた。

アタシは…

実家の両親の…

あやつり人形なんかじゃないわよ!!

もうだめ!!

三原の家には…

一生帰らないわよ!!
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