【女の事件】とし子の悲劇・2~ソドムの花嫁
第7話
ダンナは済生会病院からクビを言い渡されてプータローになった。

ゆうさくは、高知のソープの女の部屋に入り浸りになってヒモニなるし、けいさくの大学休学は失恋が原因である。

アタシは『ダンナの家の両親は、どういう教育の仕方をしているのかしらね…』と冷めた目で見るようになった。

ダンナとゆうさくとけいさくは、どこのどこまで甘ったれているのかしら!!

アタシは、そう思うだけでもイライラが高まっていた。

アタシが思っている通りに、ダンナはハローワークへ行って就職の口を探していたが、事面接に行っても不採用ばかりであった。

ダンナは、ハローワークへ行って面接の申し込みをして、面接に行ったと言うのに、不採用ばかりが続いていたから、ダンナの気持ちはヒヘイしていた。

しかし、今のアタシの気持ちはダンナの家を助けることができないので、ますますかたくなになっていた。

2018年8月10日のことであった。

アタシは、オレンジタウンにあるダンナの家に行って、残っている着替えとメイク道具を全部取り出して、紙袋に詰めていた。

着替えとメイク道具を全部取り出した後、アタシは赤茶色のバッグと着替えとメイク道具がぎっしり詰まった紙袋を持って、ダンナの家から出て行った。

家を出てから200メートル先のところで、アタシは近所の奥さまに声をかけられた。

「とし子さん。」
「あっ、奥さま。」
「どちらへ行かれるのですか?」
「アタシは、着替えとメイク道具を家から全部取り出したけん、ここから出て行きます。」

アタシの言葉に対して、近所の奥さまは『そうねぇ…あの家から出て行く行くのねぇ~』と声を濁して言うたあと、アタシにこう言うた。

「しゅうさくは、ちょっとでも気に入らないことがあればガーガーおらんで(さけんで)、近所中で暴れ回るのよ…済生会病院の主任外科医の肩書きを傷つけたからクビを言い渡されて当然よ…しゅうさくがこうなったのは、父親がお母さまカタの家のお父さまに頭が上がらない性格が原因なのよ…ヘコヘコヘコヘコヒクツになっている父親…お母さまは、超がつくほど教育ママよ…しゅうさくは、お母さまの言いなりでキョーリン(医大)に行ったのよ…『お父さんみたいにうだつが上がらなくてもいいの…お父さんのような性格になりたくないのだったら、人の百倍勉強をしなさい!!』…お母さまは、父親の悪い面ばかりを教え続けていたので、父親を冷めた目で見るようになったのよ!!…ゆうさくは高知のソープの女のヒモになった…けいさくの大学休学の原因は失恋…ああ、なさけない…男3人はどこのどこまで女々しいのかしらねぇ…家をオレンジタウンから撤去してほしいくらいはぐいたらしい(あつかましい)よね!!」

近所の奥さまが、ダンナの家をオレンジタウンから撤去してほしいと言う言葉が出たので、アタシは奥さまに事情を聞いてみた。

「奥さま、オレンジタウンからダンナの家を撤去してほしいと言いましたね…それ、どういう意味なのでしょうか?」
「とし子さんだから話すけど、毎晩深夜11時から1時の間にけいさくが外で奇声をあげているのよ…時には付近を歩いている酔っぱらいとドカバキの乱闘騒ぎを繰り返しているのよ!!」
「乱闘騒ぎ…」
「だから危ないのよ!!とし子さん、オレンジタウンに帰ってこない方がいいわよ…このままだと、殺されてしまうわよ!!」
「もちろんです…これから新しい住まいを探す旅に出ます…最後にもうひとつだけお聞きしたいことがあるのです…ダンナの家のことだけど、他にも深刻なもめ事を抱えていると言う話は聞いていませんか?」
「言わなくても分かるでしょ!!アタシたち住民は、ガマンの限界が来ているのよ!!3日前に、しゅうさくの家の近辺の家の2~3軒が家を売却して、親元へ帰ったわよ!!今朝方、イイノさんの家の前に引っ越しセンターのトラックが止まっていたわよ!!イイノさんの大学生の長男がノイローゼになって大学に行けなくなったことと、次男さんが私立高校でもめ事を起こしてキンシン中で、ひきこもりになってしまったのよ…ふたりの息子さんの療養のために家を売却して、伊豆半島の別荘へ引っ越しをしたのよ…アタシも、ガマンの限界が来ているのよ!!」
「ガマンの限界が…来ている…」
「そう言うことで、オレンジタウンに残っている住民全員で…しゅうさくの家に対して訴訟を起こすことを決意したから!!」
「訴訟を起こすって、ダンナを民事裁判にかけると言うことですか!?」
「うちら本気よ!!しゅうさくとしゅうさくの実家の家とあの家を建てた家をまとめて訴えるわよ!!家の撤去と億単位の慰謝料をオレンジタウンの住民全員に支払えとね!!とし子さん…あんたしゅうさくの実家の住所か本籍地を知っているのかしら!?」
「いえ、ダンナの実家に行ったことがないので分かりません…話変わるけど、奥さまはダンナの家の事情をご存じでしょうか?」
「そうねぇ…」

近所の奥さまは『あっ、思い出したわ!!』と言うてから、アタシにこう言うた。

「あれは確か、7年前のことだったかしら…」
「7年前?」
「そうよ…確か…広島県から60代半ばの夫婦がしゅうさくと不動産屋さんの人と一緒に家を建てる土地へ来ていたのよ。」
「もしかして…広島県からお越しになられた夫婦がおカネを出したと言うことですか?」
「その通りよ!!60代半ばの夫婦は、しゅうさくにこう言うていたのよ!!『とし子の結婚がなかなか決まらないので困っている。』とか言うて、とし子さんの名前をあげていたわよ!!」

…と言うことは

…アタシの両親が、ダンナの家の建築費や土地の購入資金を出していたってこと…

奥さまからの話を聞いたアタシは、ショックで言葉がでなかった。

そのまた上に、アタシの両親がダンナの前のお嫁さんが被害を受けたDVの問題を解決するために、アタシの両親が先回りしてフリョの事故として処理してほしいと弁護士さんにお願いして、ダンナが起こしたDV問題を事故にすり替えてインペイ工作をしていたことまでもが明らかになった。

奥さまは『ったく…どういうことなのかしらねぇ…』とあつかましい声で言うてから、アタシにこう言うた。

「とし子さんの両親はどこのどこまでこすいのかしらねぇ…しゅうさくが前のお嫁さんにきついDVを加えたのに、フリョの事故として片付けた…前のお嫁さんの家の親御さんのゲキリンに触れるようなことをして、よくしゃあしゃあとしていられるわねぇ!!」
「アタシは…三原の実家には帰りません!!」
「そうね…実家に帰らない方がいいわよ…あんたの両親も、甘やかすことしか知らないようねぇ~」

奥さまの言葉を聞いたアタシは、三原の実家にも激しい憎悪を抱くようになった。
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