清廉で愛おしい泡沫の夏
 「ねぇ、どうして僕のほうに乗ったの?」
 男は、後ろに乗る相当に美人な女に話しかける。
 「彼はずいぶん美夏に惚れ込んでしまったみたいね。ふふっ。あたしたちはほとんど同じ顔をしているのに、なぜかしら。」
 彼女は少し楽しそうに、笑った。
 「よくあんな無口で強面な男に大事な双子の姉妹|《きょうだい》をあずけられるね。」
 「惚れた女に乱暴する男はいないわ。」
 と、また楽しそうに笑う。
 「君は不思議な人だ。」
 そう言ったが、彼女は楽しそうにするだけで、返事はしなかった。
 

 
 


 

 






 







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