清廉で愛おしい泡沫の夏
 「なぁ、一目惚れって信じるか?」
 「はっ⁉えっ、あ、いや、そんな、幽霊信じるか、みたいなノリで言われても、、、ふ、普通にあるんじゃない?」
 「そうか…」
 うちの絶対的権威を持つ、総長・廉が突然そんなことを言ってきたのは、同じ顔をした、名前の通りにとても美しい双子を送り届けた後だった。
 彼女たちはとても綺麗だった。艶のある長い髪に、白い肌、大きな目に高い鼻。まるで、作り物のようだった。
 1人でも街を歩けば皆が振り返るであろう美人が、2人もいる。
  
 まぁ、美しいといったら、こっちも負けてないけど。
 ピアスどころか、アクセサリーは全くつけず、髪を染めることもない。完全な素材勝負でありながら、俺はこの人より綺麗な男を見たことがない。
 女だけでなく男をも魅了する美しさを持ちながらも、色恋沙汰には一切興味を持ったことのなかった男の、突然の、一目惚れ宣言。。。
 相手は、予想がつきすぎるけど…
 「えっと、、美夏ちゃん?」
 「…わかるか。」
 うん、だって相当見てたしね。てか美夏ちゃん結構怖がってたよね…
 
 ふと、少し前の、彼女の言葉を思い出した。
 「なんで、美夏ちゃんなの?」
 「…」
 「いや、ほら、2人って双子だし、顔も見分けがつかないくらい似てたじゃん?」
 「…似てたか?」
 似ていることに気づかなかったのか?それだけ美夏ちゃんしか見てなかったとか?
 …いや、違うか。
 きっとこの人は、第一印象すら顔とかそういう外面的なところを見ていないんだ。
 
 『ふふっ。私たちはほとんど同じ顔をしているのに、なぜかしら。』
 廉が人を外見で判断しないのは、俺たちはよく知っている。廉のそういうところをとても尊敬している。
 しかし、、彼女は、わかっていたようだった。出会って数分しか経っていないはずの相手なのに。
 さっきの話も、まるで展開がすべて見えているように俺たちを挑発しているようだった。琉があそこであんな提案をするのも、わかっていたかのように、彼女は、笑っていた。
 彼女は、何者なんだ…?
 
 
 








 

 
 
 












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