結婚前提で頼む～一途な御曹司の強引な求愛～

私は勇気を出して言葉を発する。

「わ、私、恋愛経験が少なくて」

メリットはさらにある。もし彼と恋愛関係になれば、私は毎日怒られる日々から解放されるかもしれない。榛名先輩の切れ味抜群の注意が優しい甘々な注意に代わるかもしれない。
それは精神的にすごくすごくラク！
震える声で言いながら、恐る恐る榛名先輩の顔を見つめる。

「だから、結婚前提というのは自信がないのですが」

一生に一度の恋愛チャレンジだ。

「私でよければ、お受けします」

私のしおらしい返答に、榛名先輩が切れ長の綺麗な二重の目を大きく見開いた。

「本当……か？」
「はい。本当にお友達から……くらいでお願いできれば」
「ああ、ああ、それでいい。ありがとう、行永」

榛名先輩は頬を紅潮させて私に御礼を言った。普段より早口で、照れたような困惑したような表情をしている。
なんだかまだ嘘みたい。やっぱり罰ゲームじゃないのって気分。
でもいいか。真っ赤になってる先輩なんてレアなものを見てしまったし、そんな姿はちょっと可愛いし、何より私にも人生初の彼氏ができたわけだもの。

私たちは、それ以上はろくに話さず、駅の改札で挨拶をして別れた。榛名先輩は終始落ち着かない様子で、私は笑いそうになるのを堪えなければならなかった。