結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~



翌朝、私はこれまた普通に出社した。ゆうべのことってやっぱり夢か何かじゃなかろうか。出勤の電車でそんなことを考える。榛名先輩が私に告白って、どう考えてもおかしいよねえ。
だけど、もしゆうべの出来事が本当のことで私の妄想じゃないなら、きっと今日から榛名先輩は私に優しい溺甘指導係になってくれるに違いない。ふふ、悪くない。
私は足取りをやや軽くして会社のエントランスに入るのだった。

「おはよう、行永」
「お、はようございます」

朝のオフィスで、早速、榛名先輩と遭遇する。そりゃ、席が近いから、普通に遭遇しますけどね。さあ、どんな態度?私はどんな反応をすべき?

「昨日、まとめた資料を持って午前には外出だ。花星堂とコシノフードは用田課長が同行するから、課長の分も資料を用意しておけ」

榛名先輩はいつものテンションだ。なんの感情も差し挟まない声音に、無表情。視線はこちらをちらっと見ただけ。
あれ?
うーん、まあまあ、こんなものか。だって職場だもんね。

「はい、わかりました」
「出発時刻」
「はい?」
「何時外出か、把握せずに仕事を受けるな。自分から聞け」
「あ、すみません!出発時刻は何時でしょうか」
「九時半。十時には客先だ。用田課長は午後、別件で木村班と合流だから、木村班の予定も頭に入れておけよ」
「はい!」

榛名先輩は言うだけ言って、用田課長のデスクへ行ってしまった。
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