結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~
「さらに噂だけど、めっちゃいいとこのお坊ちゃんらしいよね」

花凛の言葉にかほが頷く。

「私も聞いた! 陸斗建設じゃなかったっけ? 社長令息だって。次男だけど」
「次男はいいわねえ」

雅美が穏やか且つ現金に話に乗る。

「玉の輿目当てで言い寄る女もいるんだって」
「次男だったら、時期社長ってわけにはいかないじゃん」
「でも、相続する資産はそこそこあるんじゃない?」

花凛とかほが生々しい話をする中、私はひとりため息だ。
榛名先輩が資産家のおうちの生まれなのも聞いたことはある。だけど、それが私の毎日になんの関係があるのよ。私は彼の冷たい視線ときつい口調が優しくなることと、私自身が彼に怒られない程度に能力をあげることにしか執心していない。
正直、榛名先輩がイケメンとか、どうでもいい。

「里乃子の境遇を羨ましく思う女子はいっぱいいると思うよ」

花凛に言われ、私はぶんぶんと首を横に振った。

「このポジが欲しいならいくらでもお譲りするわ」
「え~、私譲ってほしい~。榛名先輩に手取り足取り教わりたい~。そのままあわよくば彼女枠に収まりたい~」

花凛がくねくねしなを作って熱心に言う。私はケッと吐き捨てるかのごとく答えた。

「あの人の彼女とか無理。っていうか、誰かと付き合うの、無理」
「里乃子、恋愛とかまったく興味ないもんね。でも、あんないい男と仲良くできる機会なんてめったにないんだから、もうちょっと楽しみなよ」

かほに適当なことを言われ、さらにむっと顔をしかめた。私の気持ちはどうやら、誰にもわからないようだ。
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